この人に節約について尋ねたところ「特に節約を意識していることはない」と返ってきて、今一番欲しいものも「特にない」そうである。

 一見、この盛り上がりにかける地味なFさんの回答にこそ、アラフォーのスマートな節約術の神髄が隠されているのではあるまいか。すなわち節約とは欲との戦いであって、欲が最初から戦う必要がないくらい小さければわざわざ“節約”は発生しない。

 Fさんの自然に生活している姿が、はたから見る限りでは節約を達成しているふうだが、本人は節約しているつもりはないから無理もストレスも微塵(みじん)もない。つまり戦わずして勝利している、この上なくスマートな節約術の至高の境地なのである。

 タクシーに乗りたい欲をどうそらすか。飲み食いしたい欲をどう克服するか。「欲をありのまま発散させじ」とするなら、抑えつけるなり別の方向に昇華させるなりの工夫が必要である。本稿で紹介した面々の話では、この工夫の仕方にそれぞれのアラフォー的闘争が発露していた。

 だがFさんの話を聞いて考えさせられたのは、“欲そのものを持たない”というアプローチの可能性である。断っておくが、Fさんは派手でこそないが地味でつまらない人間という感じではまったくない。欲を持たないことと人間的魅力が損なわれることとは関係がないのである。

 となれば、欲を薄めていく、煩悩を打ち消していくアプローチにはメリットしかない。当然煩悩まみれの人にはその人なりの人間的魅力が備わるが、そちらをあえて目指すつもりがないのであれば、案外写経や座禅、滝行などが節約の有効な糸口となり得るのかもしれない。

 欲にまみれてギラギラした人も面白いが、欲を持たない仙人的な境地に達している人も味わい深く同様に面白い。アラフォーを人生の折り返し地点と称するにはまだ早いかもしれないが、そろそろ老いが実体を伴って意識されるお年頃である。節約を通して自分の欲のあり方と向き合ってみるのも一興であろう。