IT業界の悪習と
決別したSCSK
IT業界といえば長時間労働のイメージが強いだろう。ITサービスのSCSKも例外ではなかった。「夜遅くまで働く社員、休まない社員を評価する風潮があった」と同社人事グループ労務課の南政克課長は打ち明ける。
転機が訪れたのは、住商情報システムとCSKが合併してSCSKとなった翌年の2012年。当時の社長が昼休みに社内を歩いていると、机の上に突っ伏して寝ている社員があちらこちらにいた。社員が疲弊している姿を目の当たりにして社長自ら危機感を抱き、残業半減運動に乗り出した。
翌13年からはその活動をさらに広げ定着させるために、さまざまな仕掛けを盛り込んだ「スマートワーク・チャレンジ20」を開始。月間平均残業時間20時間以下、年間20日の有給休暇取得率100%を目標に掲げた。すると18年度には、月間平均残業時間は08年度の35.3時間から17.7時間に、有給休暇取得日数は13日から18.5日となり、働く環境は大きく改善した。
成功の理由はいくつかある。まず目標達成のインセンティブを導入したことだ。一般的に残業時間が減ると収入も減るため、それが残業抑制の障害となることもある。しかし同社では残業が減って浮いた分を原資としてボーナスで還元した。
もう一つは「逆」のインセンティブ導入だ。長時間労働をした部署に対して管理会計上でペナルティーを科す制度を採用したことで、マネジメント側にも長時間労働をさせないインセンティブが働いたのだ。
一方、同社で女性活躍のための施策が動き出したのは06年のこと。当時は入社10年で女性社員の70%が辞めてしまうような状態で、危機感を抱いた経営トップがフレキシブルな勤務形態を可能とする制度を導入し、11年には入社10年後の離職率が70%から30%まで低下した。
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その後12年からは女性管理職を育成するためのキャリア支援のプログラムを開始。当初13人しかいなかった女性管理職は19年度に87人まで増え、管理職に占める女性比率は2%から9%に増加した。
「女性の管理職を増やすためには男性管理職の意識改革も不可欠」と酒井裕美・ダイバーシティ推進課課長は付け加える。
こうした取り組みが評価されたこともあり、同社の女性の新卒採用は13年から18年で応募者が45%増えて6433人に、採用人数は180%増えて80人となっている。