ダイバーシティ推進で 
意識が変わった丸井グループ 

「いつもおじさんばかり集まって残業して会議をしていることが、業績が回復しない原因なのではないか」

 丸井グループの青井浩社長は、上場以来初の赤字となった08年度、はたとその原因に思い当たった。多様性のない画一的なメンバーだけで残業して会議をやっても良いアイデアなど出るはずがない。そこから同社の働き方改革がスタートした。

 きっかけはトップのリーダーシップだったが、改革は管理職によるトップダウンと一般社員によるボトムアップというプロジェクト形式で進めた。ユニークなのは、こうしたプロジェクトは通常、選ばれたメンバーで進めるものだが、同社ではやりたいと思った人が自分から手を挙げて参加していることだ。自分たちで提案し、自分たちで実行するからこそ、改革は定着していった。

 下図で示したように08年からの11年で1人当たりの残業時間は88時間、総残業代は約26億円も減少し、離職率もおよそ3分の1まで低下した。

 一方、同社がダイバーシティ推進に注力し始めたのは13年ごろから。働き方改革が進展する中で、意思決定に関わる場に多様性がないのは問題だということになり、もともと女性社員が半分近くを占める同社は本格的に女性管理職の育成に乗り出したのである。

 この活動も管理職によるトップダウンと、自ら手を挙げて参加した一般社員による提案というボトムアップのプロジェクト形式で進められた。さらに活動の成果を見える化するため「女性イキイキ指数」と呼ばれるKPI(重要業績評価指標)を設定し、社員への意識調査で評価している。

 13年に7%だった女性管理職比率は、19年3月期には12%まで上昇し、男性社員の育休取得率はなんと100%を達成した。

 採用活動でも変化が起きている。もともとファッションが好き、人が好きといった属性の応募者が多かったが、「最近では『丸井グループのインクルージョン(誰も置き去りにせずに包含すること)に共感しました』『ダイバーシティに関わりたいです』という応募者もいる。これまで当社とは接点が少なかった多様な人が応募してくれるようになった」(山崎美樹子・人事部人事企画・多様性推進課長)。

 SCSKも丸井グループも、世の中で働き方改革や女性活躍が騒がれる以前から取り組みを進めてきた。その成果が今、表れている。