クレーマー対応電話などでも無理な要求をするクレーマーが増加しています Photo:PIXTA

 顧客からのクレームがハラスメントの域に達し、従業員を心身ともに追い込む「カスタマーハラスメント」が大きな社会問題になっています。この問題をより深刻にしているのが、一見善良そうな“普通の人”が些細なことで自己中心的なクレーマーになっていることです。

 こんな悪質なクレーム対応を現場に任せきりにせず、組織として対策に取り組むにはどうすればいいのか。まず、組織全体で共有していただきたいのが、対応できない要求には「断る勇気」を持つことです。

 とはいえ、「そんなの簡単にできないよ」という方も少なくないでしょう。そんな方に紹介したい断るための効果的な技術が「3だん話法」です。

無理な要求に現場の従業員は苦しめられている

ヨーグルトにビニールフィルムが入っていたと初老の男性から苦情の電話がありました。「俺が気づいたから良かったものの、孫が食べていたら喉に詰まらせて大変なことになっていたぞ!どうしてくれるんだ!今すぐ家まで謝罪に来い!」とすごい剣幕で主張されました。相手は遠方にお住まいのためすぐに向かうことは不可能でしたが、あまりの勢いに、思わず「行く」と答えてしまいました。

 この事例は、ある食品メーカーから寄せられた相談を改変したものです。相談を受けた私は、「約束してしまったことでも丁寧に断ればよい」と担当者にアドバイスしました。しかし、うまく伝える自信がないとのことで、私がこの男性に電話し、今すぐの訪問は不可能であることを伝えました。

 このように、「お客様は神様」という言葉のまま顧客に100%従っていたら、貧乏神や疫病神に従業員が取りつかれてしまったというケースが後を絶ちません。それほど「絶対に無理だとわかっていても相手の要求をうまく断れない」という現場からの相談はとても多いのです。

 そんな一次クレーム対応者の方に活用してほしいと思って考えたものが、第1回で解説した「3だん話法」です(参考:カスハラ時代の悪質クレームに潰されないための「3だん話法」とは)。「だん」には3つの意味を込めています。