1度目の運転差し止めを決めた仮処分は、伊方原発から130キロメートル離れた火山が噴火すれば火砕流が伊方原発に到達する可能性を指摘し、伊方原発3号機が安全審査に基づいて規制基準に適合したとする原子力規制委員会の判断が「不合理」だとした。

 今回の広島高裁決定は、四電が実施した伊方原発近くにあるとされる活断層の評価が不十分とし、原子力規制委員会がその不十分な評価に基づいて安全審査をクリアさせた判断は「過誤ないし欠落があった」と結論づけた。

 ざっくりいえば、火山、活断層という争点で、原子力規制委が司法にコテンパンに打ち負かされたのである。

 揺れに揺れる司法判断ではあるが、実は、広島高裁で2度も決定が下された伊方原発3号機に対する運転差し止めの仮処分については、ある共通の傾向がある。

 1度目の決定を下した野々上友之裁判長(すでに退官)、今回の仮処分を決めた森一岳裁判長、いずれも定年退官間際の裁判官なのだ。

 原発に限ったことではないが、国の政策を左右するような判決、または決定を出す場合、何者からも独立している裁判官でも勇気の要ることだ。

 裁判官とはいえ、会社と同じように上層部、つまり最高裁判所に人事が握られている。権力に楯突くような判決を書いた裁判官が左遷されるケースは少なくない。

 翻せば、ほぼキャリアを終えた裁判官ならば、誰に忖度する必要もない。司法関係者は「定年を控えた裁判官は思い切った判決、決定を出すことができる傾向にある」と指摘する。

 定年退官を控えた裁判長が裁判官のプライドに懸けて、原発の運転を差し止める仮処分はこれからも起こりうるだろう。