脱原発派は闘争手段として、全国各地で今後も原発運転差し止めを求める仮処分申し立てを繰り広げられるのは、ほぼ間違いない。
仮処分の申し立ては、原発から半径250キロ圏内の住民に訴訟を提起できる資格を認めていて、脱原発弁護団全国連絡会共同代表を務める河合弘之弁護士は「司法の力で止める」と断言しているからだ。
いわば、原発を抱えた電力会社は、“もぐら叩き”のごとく全国各地で繰り広げられる法廷闘争に対処しなければならず、司法によって原発を止められるリスクから逃れられない。
原発政策の放置続ける
安倍政権の“塩対応”
原発は国策民営方式でこれまで推進し、電力業界と政府はガッチリとタッグを組んで二人三脚で歩んできた。電力業界にとって“相棒”であるはずの政府は、原発に対する司法リスクに関しては“塩対応”だ。
伊方原発3号機の運転差し止めを命じた広島高裁の仮処分を受け、菅義偉内閣官房長官は「原子力規制委員会の審査に適合した原発は、規制委の判断を尊重して再稼働を進める」と、まるでお題目を唱えるかのようにコメントした。
菅官房長官のこのコメント、全く的外れなのである。そもそも、広島高裁は原子力規制委員会の判断そのものを「不合理」と断じているのだ。
司法によって原発に“ノー”が突きつけられた場合に対する原子力規制のあり方や原子力行政について語っておらず、安倍政権が原子力行政、そしてエネルギー政策に全く関心がないことの現れである。
資源の乏しい日本にあって、原発は“準国産”エネルギーとして重要な位置を占めてきた。世界が脱炭素化社会を目指す上で、政府は原発が「実用段階にある脱炭素化の選択肢」とうたっているが、政策は漂流している。