地道に「1対1の信頼関係」をつくる

「退職が多い部署」は何が足りないのか

北野 社員が役員に対して率直な意見を言えるのは、信頼関係があるからですよね。他の企業が同じようにアンケートの仕組みだけを導入しても、信頼関係がなければコメントを書いてくれる人は限られそうです。社員に意見を言ってもらうためのファーストステップとして、できることは何かありますか?

曽山 地道ですが、一人ひとりの声を聞いて、役員自らがフィードバックすることしかありません。「コメントしてよかった」と思ってもらえる社員を増やす。「1対1」の信頼関係を増やす。

サイバーエージェントも、全社員から100点と言われているわけではありません。でも「何か書けばレスポンスがある」という状態を目指して努力しています。この姿勢を維持することが重要だと思っています。

私自身も、毎月30件から50件くらい個別にレスしていて、メッセを送ったりしているので、みんなびっくりします。「え、曽山さんからレス来るんですか?」と(笑)。そこまでして、社員の声をちゃんと見ていること、言えば届くことを、まずはわかってもらうことですね。

それと僕は、1つひとつの約束を大事にしています
たとえば、経営に対して問題提議をしてくれた人がいたら、役員会議に持っていくところまでは約束する。その一例で、たとえば昔、インフルエンザの予防接種を導入したことがあります。ある社員から、「社内でインフルエンザが流行ると業務上のマイナスが大きくなるから、会社として予防接種を受けさせたらどうですか?」という提案があったんですね。4000人分だと当然コストかかるんですけど、役員会議にあげたらすぐに決まりました。

1人の声に耳を傾ける。1つの約束を守る。これを続けていくとアンケートのコメントが増えていくので、2年前から「GEPPO(ゲッポウ)」運用メンバーを決めて、できるだけすべての回答に返信しています。現在は、4000人のうち、「GEPPO(ゲッポウ)」に対して3営業日で80%、5営業日で90%が回答してくれています。

北野 すごい(笑)。アンケート担当のメンバーがいるんですね。それほど1対1にこだわっているということですよね。

業績がいい部署は「月イチで面談している」

曽山 もうひとつ、強制ではありませんが上司と部下の「月イチ面談」も推奨しています。これは僕が2005年に人事に来たときに「うまくいっている部署とそうでない部署の違い」を調べたことがきっかけで考えた仕組みです。

うまくいっている部署は「上司と部下の対話が多くて、週イチで面談している」ことがわかったんです。さすがに週イチはハードルが高いので月イチに減らして、2006年から続けていますが、これは推奨してとても良かったです。

当時は、上司の側に面談のやり方を知らない人や、面談に苦手意識がある人が多かったので、勉強会やロールプレイングもやりました。実際に面談してみると、相互理解が深まって、課題や目標を聞きやすくなります。「えっ!あの人が辞めちゃうの!?」という、いわゆる「びっくり退職」も減りました。

北野 「びっくり退職」ってわかりやすいキーワードですし、最近注目されてきた「1on1」を、2006年から続けているわけですか。サイバーエージェントの成長は、1対1の信頼関係の積み重ねの上に成り立っているんですね。