武漢からの帰国者を隔離する
必要性についての意外な結論

 さて、批判を覚悟で次の問題を考えてみましょう。武漢から帰国したチャーター機の乗客の扱いについて、日本政府は発熱のあった人を除き自宅で経過観察をするように指示し、フランス政府は全員を14日間の隔離対応としています。これは、どちらが正しい対応なのでしょか。

 今回の新型肺炎は、最新の情報では潜伏期間が最長14日間だといわれています。これが、今回の新型肺炎がパンデミックを引き起こすと考えられる、大きなリスク要因といわれるゆえんです。最初にそう述べると、多くの読者の方は不安に思うかもしれません。「彼らを隔離しなくていいのか?」と。

 しかし、そのような世論は経済合理的なのでしょうか。 1月23日以前には武漢からの観光客は当たり前のように日本に入国していたし、新型肺炎が確認されている中国の他の都市からは今もたくさんの訪日客が訪れています。その人数とチャーター機の204人を比較してみて、はじめて経済合理的な議論ができるのではないでしょうか。

 これについても、数字を計算してみましょう。令和元年の訪日中国人は合計で959万人。つまり1日あたり2.6万人がわが国に入国しています。経済合理的に考えるということは、この2.6万人のリスクとチャーター機で帰国した乗客のリスクのどちらが高いかを、考えることでもあります。

 ここで考慮しなければならないことは、コロナウイルスによる新たな病気は、潜伏期間が長い一方で、人口あたりの発症率が0.1%とインフルエンザと比べてかなり低いことです。そして武漢封鎖前にすでに中国各地に人の移動が起きていて、他の都市でも発症が報告されています。あくまで確率の問題として考えると、チャーター機の帰国客から病気が広まるリスクよりも、今毎日入国している訪日観光客から発症者が出るリスクのほうが、ずっと大きいのです。

 さらにいえば、発症前の観光客をすべて隔離することは物理的にできないし、経済合理的に考えてもワリに合わない。チャーター機の乗客も同じことで、政府の自宅待機という措置は、経済合理的な判断だということです。

 ならば、フランス政府が隔離を決めたのはなぜでしょうか。それは、経済合理性とは別に、政治リスクがあるからです。