「リスクを避ける」は癖になる
対戦相手のデータがほとんどわからない状態で試合をしていると、試合をひとつ落とすこともあります。通常のルールは2試合先取。つまり、あと1試合落とせば終わりです。1試合を取られてこちらは追い詰められた状態、相手は何が何でも、と気迫を前面に出してくる。そんなときにどうするのか。一番大事なのは自分の実力が相手を上回っている、その事実を一度忘れることです。「自分の方が強い立場だ」という気持ちでいると、どうしても気持ちが消極的になってしまいがちだからです。
「立場が上なら余裕をもって戦えばよいのでは」と思うかもしれません。しかし残念ながら人間はそんな風にできていません。その余裕を、ついつい勝負を避けて安全安心を買うことに費やしてしまう。これは人間の本能かもしれません。だからこそ格上の自覚があるのであれば、意識して挑戦者である気持ちが必要になるのです。
逆に、明らかに自分が格下であれば、自然に挑戦者の気持ちでいられる。失うものがない人ならではの強みがあるのです。
優位な立場に寄りかかり、リスクを怖れて勝負を避けても勝つことはあります。これはあまりよくない勝ち方です。勝つことで反省の機会を失ってしまうからです。
リスクを避けて勝ってしまうことで、それが癖になってしまう人がいます。これではプレイの幅が狭まり、結果的に実力も伸びません。こういったプレイヤーは自分よりも大きく劣った人には負けにくいので、一見すると強そうにも見えます。しかし、自分よりも強い相手にはかないません。格下相手の処理能力に長けているタイプです。それはそれで立派な技術なのですが、強いこととは異なります。