株価暴落で積立金が減っても
慌てることはない

 これも先ほどの家計に例えるとわかりやすい。今後はお父さんが退職して収入が減るにもかかわらず、子どもたちに何かと物入りが続くので、現在1980万円ある貯金を取り崩して生活をし、残高を500万円ぐらいになるまで計画的に使っていこう、ということなのだ。

 年金積立金は、これまで働いてきた人たちが納めた保険料の余剰分+運用によって得られた収益から構成されているものであり、いわば国民の大切な財産である。将来世代が困らないよう、年金財政の健全さを維持するために使われるのは当然であろう。

 恐らく世界の株式市場は今後、どこかでまたリーマンショック級の下落を経験することになるだろう。一定割合を株式で運用しているこの年金積立金も、その時は一時的に評価額が減少することは避けられない。

 そんな事態が起きたら、きっとまたマスコミはその減少を大きく取り上げ、年金不安をあおるのは間違いないだろう。しかしながら、年金制度の仕組みと年金積立金の本質をしっかり理解していれば、そのような不安に惑わされることはなくなる。

 なにしろ、仮に積立金がゼロになったとしても、年金がすぐに破綻するというわけではないからだ。そして、株式市場というものは、永遠に上がり続けることも永遠に下がり続けることもない。大きな下落があってしばらく停滞する時期があったとしても、再び回復する時期が必ずやってくる。だからこそ、年金積立金は地味ながら、一定のポートフォリオで運用を続けているのである。

 年金積立金が年金支払いの原資であるというのは完全な思い込みによる勘違い、ヒューリスティックである。われわれの老後の生活をまかなう大切な柱の一つである年金の仕組みについては、ぜひ正しい理解を持ってもらいたいものである。

(経済コラムニスト 大江英樹)