「スイッチングコスト」とは、現在利用している商品やサービスを他社の商品やサービスに乗り換える際の、心理的、物理的または経済的負担のことをいいます。

 飲食店や小売店などはスイッチングコストが低い業種に位置づけられます。例えば、毎日違う店でランチを食べることに何の抵抗もないでしょうし、毎日違う店で商品を買うことも、ごく普通のこととして我々は生活しています。だからこそ、どの店もこぞってポイントカード等を発行し、顧客を囲い込むことに必死なのです。

 航空会社がマイレージサービスを提供している理由は、スイッチングコストが低いことにあります。これに対して鉄道会社は、同じ旅客輸送業ですが、航空会社よりはるかにスイッチングコストが高いといえるでしょう。だから鉄道会社は、航空会社のように高額なマイレージサービスを提供していないのです。

 この点、名刺管理サービスは、一度契約したらなかなか他社に乗り換えることはしないでしょう。わざわざ名刺をデータ化し直すのは手間がかかりますし、導入時にかかったコストがもったいないと感じるからです。

 ましてや、データでの名刺管理の便利さを一度味わってしまったら、それを手放すのは困難です。よほどのことがない限り、紙での名刺管理には戻れないでしょう。現に、Sansanの解約率はわずか0.66%です(2019年5月期時点)。

 下図を見てください。

キャッシュがどんどん貯まるビジネス、2つの仕組み

 サブスクリプションモデルかつスイッチングコストが高いSansanのサービスは、着実に収益を伸ばすことが見込めるため、キャッシュ・フローの見通しが立ちやすいビジネスといえます。