世界遺産めぐりで「宗教の教養」を高める

 ローマ・カトリックや東方正教会の布教のパワーとなったのは、美術だけではありません。

 一二世紀の終わりくらいまではローマ・カトリックではロマネスク建築、東方正教会ではビザンチン建築の教会が主につくられました。その後、非常に高い塔を持つゴシック建築が生まれました。ドイツのケルン大聖堂は、ゴシック建築を代表するカトリック教会。ステンドグラスの美しさに魅せられて世界中の人々が訪れますが、特徴的なのが尖塔の高さです。一五七メートルもあり、高い塔は神のいる天を目指しているとされます。

 本書執筆中に火災にあったパリのノートルダム大聖堂は、聖母マリアに捧げるために建造された、やはりゴシック建築を代表する教会です。ステンドグラスやレリーフも多く、早く再建されるよう願うばかりです。

 また、サン・ピエトロ大聖堂はカトリックの総本山であり、ミケランジェロが設計した一三二メートルのクーポラ(ドーム)は荘厳です。調和の美のルネサンス様式と豪華なバロック様式の両面をかね備えるとされています。

 こうした教会も「世界遺産」として観光するだけでなく、知識を持って見れば、自分のなかにインプットされる情報が豊かになります。