先行き懸念
一段と高まる世界経済

 今後の展開を考えた時、新型肺炎の影響から、中国を中心に世界経済の減速懸念は徐々に高まる可能性がある。中国では生産の混乱に加え、消費者物価指数の上昇も顕著だ。1月、中国の消費者物価指数は前年同月から5.4%上昇した。豚肉価格の高騰に加え、春節を迎えて消費が増加する中で新型肺炎の防疫が物流を混乱させたことなどが響いた。

 中国では、景気の減速や企業業績の悪化から雇用・所得環境は不安定化しており、新車販売台数は減少傾向にある。その中で物価が上昇すれば、中国の個人所費は一段と落ち込むだろう。それは、中国経済に依存してきた東南アジアや南米の新興国、さらにはオーストラリアなどの資源国の景気減速の一因となり得る。また、韓国と並んで中国の需要を重視してきたドイツにも自動車業界を中心に逆風が吹くだろう。

 新型肺炎が米国経済に与える影響も軽視できない。その一つとして、近年の米国経済を支えてきたIT先端企業のビジネスモデルの不安定性は高まりつつあるとみられる。すでに米中の貿易摩擦などにより世界のサプライチェーンが混乱した。新型肺炎はそれに拍車をかけているとみるべきだろう。その結果、自らは先端のテクノロジー開発に注力し、中国にあるホンハイの工場で生産(組み立て)を行うことで高付加価値の製品を世界に供給してきたアップルの成長期待は低下する恐れがある。

 また、建設機械やエネルギー需要などでも、米国企業の収益下振れリスクは増大しつつあると考えられる。中国の物流が停滞したり、消費がさらに落ち込んだりすることによって、農産品を中心に中国の対米輸入が伸び悩み、トランプ大統領が重視する対中貿易赤字の削減が思うように進まなくなることもあるだろう。それは、米国の対中圧力の増大につながり、世界経済を下押ししかねない。

 足元の世界経済は米国の個人消費に支えられ、どうにか安定感を保っているというべき状況にある。その中で米国の企業業績の懸念が高まれば、徐々に労働市場の改善は鈍化し、個人消費は鈍化する可能性がある。新型肺炎は世界各国の先行きの景気に関する不安を高める要因の一つと考えるべきだ。

(法政大学大学院教授 真壁昭夫)