「アートという植物」のお話におつき合いいただき、ありがとうございました。
私がこのような比喩を持ち出したのには、2つの理由があります。

1つは、あまりに多くの人が「アート=アート作品」だと勘違いしているからです。いまお話ししたとおり、アートという営みにおいて、「作品」というのは地表に出ている「花」でしかありません。「表現の花」は最も目立つ部分ではありますが、あくまでも一部分でしかないのです。

もう1つの理由は、「アート思考」というものについて、イメージをつかんでいただきたかったからです。
単純化していえば、アート思考というのは、アートという植物のうちの地中部分、つまり「興味のタネ」から「探究の根」にあたります。ちょっとかしこまった定義をするなら、アート思考とは「自分の内側にある興味をもとに、自分のものの見方で世界をとらえ、自分なりの探究をし続けること」だといえるでしょう。

■執筆者紹介
末永幸歩(すえなが・ゆきほ)

美術教師/東京学芸大学個人研究員/アーティスト
東京都出身。武蔵野美術大学造形学部卒業、東京学芸大学大学院教育学研究科(美術教育)修了。
東京学芸大学個人研究員として美術教育の研究に励む一方、中学・高校の美術教師として教壇に立つ。「絵を描く」「ものをつくる」「美術史の知識を得る」といった知識・技術偏重型の美術教育に問題意識を持ち、アートを通して「ものの見方を広げる」ことに力点を置いたユニークな授業を、都内公立中学校および東京学芸大学附属国際中等教育学校で展開してきた。生徒たちからは「美術がこんなに楽しかったなんて!」「物事を考えるための基本がわかる授業」と大きな反響を得ている。
彫金家の曾祖父、七宝焼・彫金家の祖母、イラストレーターの父というアーティスト家系に育ち、幼少期からアートに親しむ。自らもアーティスト活動を行うとともに、内発的な興味・好奇心・疑問から創造的な活動を育む子ども向けのアートワークショップ「ひろば100」も企画・開催している。著書に『「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考』がある。