地面師事件にマネロンの兆候
三菱UFJに質問の書簡を送った

――地面師グループの主犯格が捕まって、騙されたカネは特別損失計上され、積水ハウスの問題としてはもう過ぎたものという認識が日本では一般的なようにも思います。米国の投資家や専門家などは、この問題をまだ気にしているんでしょうか。

ジェイコブズ氏 コーポレートガバナンスは今、世界的に最も重要な問題となってきています。多くの企業が適正な基準でもって仕事をし、パフォーマンスを出していくことが期待されている。テロにもマネーロンダリングにも関与してはならず、そうした問題は米国では非常に大きなレッドフラッグになります。

パメラ・フェネル・ジェイコブズパメラ・フェネル・ジェイコブズ/1960年生まれ。米スパウティング・ロック・アセット・マネジメントのチーフ・サステナビリティ・オフィサー。ESG(環境・社会・ガバナンス)の専門家で、上場企業に対してESG目標を重視させる活動に従事。コンサルティング、講演活動などを行っている Photo by T.U.

――マネロン問題に詳しいブレディさんは2月17日に開かれた株主提案側の会見で、この事件はマネロンの兆候が見られ、この件に関して米国の情報機関と動いていると言及しました。

(編集部注:高額な不動産取引は銀行振り込みが一般的だが、この事件では預金小切手で代金が支払われた。小切手はカネの流れの記録が残りにくいため、マネロンに利用されやすい)

ブレディ氏 当時は内部にいなかったので、調査を手伝うことはできませんでした。いれば、もっと簡単だったんですけど。

――ブレディさんは、小切手を現金化した三菱UFJ銀行にも問題があると指摘しています。この件で三菱UFJとすでに話はしているのですか。

ブレディ氏 質問するための書簡を書きました。

――いつ送りましたか。

ブレディ氏 1月9日。

――返事は?

ブレディ氏 まだです。三菱UFJは良い銀行だと思いますし、積水ハウスとも良い関係を持ってきました。今後私たちが取締役になったときも協力関係を維持していきたい。書簡には、私たちは銀行と協力していったい何が起こったのかつまびらかにしたいと書きました。

――調査をするとなったら、三菱UFJとも手を組みながらやっていくのがベスト?

ブレディ氏 もちろんそうです。その必要があります。

――三菱UFJフィナンシャル・グループ全体で見ると19年に積水ハウスの株式保有比率が増えて、8%を超える大株主になっています(19年8月時点)。ということは問題視していないんでしょうか。

ブレディ氏 分からないですけど、積水ハウスそのものはね、良い会社だと思います。

>>後編『積水ハウス議決権争奪、「ESG銘柄のガバナンス不全」に投資家動く』に続く

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