(6)キーメッセージは「13文字以内」
また、先ほどのスライドをご覧になって、気づいた方がいるかもしれませんが、長々と文章を書いたスライドは1枚もありません。これは、プレゼン資料をつくるうえで、非常に重要なポイントです。
プレゼン資料において、キーメッセージは「読ませるもの」ではなく「見せるもの」です。1字1字読んで、ようやく意味がわかるのではダメ。パッと見た瞬間に、意味がスッと頭に入ってくるようにしなければなりません。
そのためには、どうすればよいか?
方法はただひとつ。文字数を減らすことです。
人間が一度に知覚できる文字数は、少ない人で9文字、多い人で13文字といわれています。瞬間的に文字と意味を同時に把握することができる文字数は13文字が上限。これを超えると、意味をつかみ取るのに「読む努力」が必要になるのです。「Yahoo!」のニューストピックの見出しが13文字が上限になっているのは、これと同じ理由だと思います。だから、タイトルやキーメッセージは必ず13文字以内に収めるようにしてください。
(7)補足的な内容は「アペンディックス」へ
ここまで読んで、こんな疑問をもった方がいらっしゃるかもしれません。
「“抜け漏れ”のない資料をつくろうとすれば、ここまでシンプルな資料にはできないのでは?」
もっともな疑問だと思います。
たしかに、私たちは、企画や事業内容を検討する際に、数多くのデータを集めます。検証データに「抜け漏れ」があれば、有効な対策・提案を構築することはできません。しかし、これが複雑なプレゼン資料を生み出す原因ともなってしまうから、要注意です。
というのは、「抜け漏れ」のないロジカルな資料をつくるために、私たちは、検討過程でかき集めたデータや要素のすべてを盛り込もうとしてしまいがちだからです。しかし、本編資料に「あれもこれも」と要素を盛り込めば、とてもではありませんが「5~9枚」に収めることはできません。結果として、決裁者にとって非常にわかりづらいプレゼンになってしまうのです。
そこで、本編スライドには最重要の要素だけを盛り込み、補足的な要素はアペンディックス(別添資料)にもっていくようにします(下図参照)。そうすることで、本編スライドを「5~9枚」のシンプルなものにするとともに、アペンディックスで「抜け漏れ」をなくすことができるのです。重要なのは、何が本質的な情報で、何が補足的な情報かを見極めることなのです。
そして、プレゼンをする際には本編スライドのみを提示し、聞き手から質問されたときや、プレゼン後のディスカッションで、適宜、必要なアペンディックスを提示しながら説明します。決裁者の納得度を高めるためには、充実したアペンディックスが不可欠ですから、不足のないようにしっかり準備するようにしてください。
以上、「7つのポイント」を踏まえながら、社内プレゼンの全体構成を考えるようにしてください。そして、どのようなスライドをつくる必要があるかを明確にイメージすることが、効果的なプレゼン資料を最速でつくる大前提です。
明確なスライド・イメージもなく、パワーポイントを操作すると、「ああでもない、こうでもない」と迷ったり、「やっぱり違う…」とやり直しになったり、無駄な時間がどんどん膨れ上がるのです。まず、プレゼンの全体構成を固めて、スライド・イメージを明確にすることが大切です。それさえできれば、あとは、『パワーポイント最速仕事術』で紹介している「手順」をなぞるだけで、あっという間に一流のプレゼン資料が完成します。
*「優れたスライド」を最速でつくる「パワーポイント最速仕事術」の一例はこちらをご覧ください。
【連載第1回】 https://diamond.jp/articles/-/230055
1973年福井県生まれ。東京学芸大学卒業後、光通信に就職。「飛び込み営業」の経験を積む。2000年にジェイフォンに転職して以降、ボーダフォン、ソフトバンクモバイル株式会社(現ソフトバンク株式会社)と17年にわたり移動体通信事業に従事。営業プレゼンはもちろん、代理店向け営業方針説明会、経営戦略部門において中長期計画の策定、渉外部門にて意見書の作成など幅広く担当する。
2010年にソフトバンクグループの後継者育成機関であるソフトバンクアカデミア第1期生に選考され、事業プレゼンで第1位を獲得。孫正義社長に直接プレゼンして数多くの事業提案を承認されたほか、孫社長が行うプレゼン資料の作成も多数担当した。ソフトバンク子会社の社外取締役や、ソフトバンク社内認定講師(プレゼンテーション)として活躍したのち、2013年12月にソフトバンクを退社。独立後、『社内プレゼンの資料作成術』『社外プレゼンの資料作成術』『プレゼン資料のデザイン図鑑』(ダイヤモンド社)を刊行して、ビジネス・プレゼンの定番書としてベストセラーとなる。
2016年株式会社固を設立。ソフトバンク、ヤフーをはじめとする通信各社、株式会社ベネッセコーポレーションなどの教育関係企業・団体のほか、鉄道事業者、総合商社、自動車メーカー、飲料メーカー、医療研究・開発・製造会社など、多方面にわたり年間200社を超える企業においてプレゼン研修・講演、資料作成、コンサルティングなどを行う。プレゼンテーション協会代表理事、サイバー大学客員講師なども務める。