『週刊ダイヤモンド』3月7日号の第1特集は、「コンビニ 搾取の連鎖」です。コンビニエンスストア業界で苦境に追い込まれているのは、フランチャイズ契約先の加盟店だけではありません。厳しい取引条件に泣く食品メーカー、ノルマに追われる本部社員もいます。一方、本部の親会社である総合商社は、配当金や幹部人事、そして商流を抑え、いわば〝勝者〟として君臨しています。

加盟店とメーカーを犠牲に総合商社が潤うコンビニの実態

 24時間営業を事実上強制され、棚いっぱいの商品を仕入れさせられる。値下げは認められず、売れ残ってもその原価の大半を負担する──。

 コンビニエンスストア加盟店オーナーたちの苦境が叫ばれている。過労死のリスクにさらされながら身を粉にして働いても、人件費の高騰で収入は減少の一途。自身や従業員を社会保険に加入させられず、年金事務所に見つからないようおびえる日々を過ごす。

 コンビニの店頭に並ぶのは、デパ地下にも引けを取らないクオリティーの食品だ。確かにおいしい。その裏で、日本を代表する大手食品メーカーの担当者がコンビニ本部に日参。最新技術と生産ラインを惜しげもなく差し出して低利益のPB(プライベートブランド)商品を製造し、売り上げを確保する。悪条件に耐え切れなくなった地場の食品メーカーの中には、悲惨な末路をたどった例もある。

 それではコンビニ本部に勤める社員が幸福なのかといえば、必ずしもそうではない。

 加盟店を担当する末端の社員もまた、上司からの厳しいノルマ達成に追い立てられている。こうして無断発注や〝自爆営業〟に身を投じる構図が出来上がる。

 浮かび上がるのは、コンビニ本部が高い収益を上げる裏側で、加盟店だけではなく、取引先や自社の末端の社員からも、カネや資源を貪欲に吸収している実態だ。

 そして、上には上がいる。コンビニ本部の上に君臨するのが、総合商社である。業界2位のファミリーマートは伊藤忠商事が、3位のローソンは三菱商事が親会社として支配する。配当金や顧客情報を得るほか、あらゆる取引をグループで囲い込み、ビジネスチャンスを物にしている。

「開いててよかった」「お客さまのニーズのために」──。最大手のセブン-イレブン・ジャパンを筆頭に、本部の美辞麗句の裏ではまさに〝搾取の連鎖〟の図式が構築されているのだ。

 公正取引委員会が長年手を出しあぐねる中、コンビニの抱えるゆがみが次々と顕在化している。加盟店の〝反乱〟だけではなく、歪な〝商社支配〟を告発する声も本部社員から出始めた。

業界を揺るがすコンビニ“社会保険廃業”リスク
未加入事業者向け年金事務所「対応マニュアル」

『週刊ダイヤモンド』3月7日号の第1特集は、「コンビニ搾取の連鎖」です。

24時間営業の是非を発端に、加盟店の過度な負担が注目されたコンビニエンスストア業界。しかし、業界の問題は加盟店の苦境だけではありません。食品メーカーなどの取引先や、本部で働く末端の社員たちもまた、厳しい要求やノルマにさらされています。

そして加盟店や取引先などから利益を吸い上げるコンビニ本部のバックには、親会社である大手総合商社が君臨。食物連鎖の頂点に存在するかのごとく、配当金に加えて商流の隅々に入り込み、収益を手にする「搾取の連鎖」を作っています。

また、人件費の高騰などに採算悪化に苦しむ加盟店オーナーにとって、さらなる負担になりかねない“爆弾”が存在します。それは社会保険料の支払い問題。法律で決められた義務とはいえ、社会保険料を支払えば事業はとても継続できない“社会保険廃業”リスクが高まっています。特集では社会保険を支払った場合のコンビニ加盟店の収支を独自試算。さらに、社会保険未加入事業者向けに、年金事務所からアプローチがあった際の「対応マニュアル」も用意しました。

▼クビ切りマニュアルも存在!ファミマ中高年リストラの真相
▼合併で業界2位に躍り出ても成長できなかったファミマ
▼伊藤忠出向組に向けられたファミマ生え抜き社員の怨嗟
▼ローソン取締役を三菱商事出身者が独占
▼店頭の棚がコンビニPBに侵食されるワケ
▼背に腹は代えられずPBにすがる食品メーカー
▼増収増益が3割しかいないコンビニ取引先〝搾取〟の現実
▼〝コンビニ倒産〟回避のための地方メーカー生き残り策
▼カリスマの負の遺産を解決できないセブン首脳たち
▼セブンペイ、残業手当…ガバナンス不在の複雑要因
▼自爆営業、無断発注…現場の暴走を止められないセブン
▼セブン加盟店が時短営業で増益、崩れた本部の言い訳
▼専門家が一刀両断!公取もたじろぐコンビニ独禁法違反の論点
▼社会保険加入で即廃業?オーナーを追い込む時限爆弾
▼徹底試算!ただでさえ少ない加盟店利益を社会保険料が圧迫
▼国税情報も使って未加入事業所を捕捉する日本年金機構
▼年金事務所に逆らうな!事業者向け社保完全対策マニュアル

 出店競争に急ブレーキがかかり、もはや隠し通せなくなったコンビニ業界の歪みや軋みに光を当て、解決に向けた処方箋を探ります。

(ダイヤモンド編集部記者 岡田悟)