製薬は“ビジネス”

 まずもって、感染症は「流行」があるため、治療薬やワクチンの開発(通常数年~十数年)が完了した頃には流行が終息している可能性が高い。いざ上市の段階になって「ほとんど売れない」となれば、製薬会社は当然、研究開発費を回収できない。そもそも治験段階で必要な感染者が集まらず、開発断念という“リスク”すらある。

 また感染者数も製薬会社がもろ手を挙げて開発に取り組みたいほど多くはない。感染者数は露骨に言えば、製薬会社にとっての「客数」。2月25日時点で中国が約8万人、日本はクルーズ船を含めて約900人。「潜在的な感染者数はもっと多い」との指摘はさておき、数字だけを見れば希少疾病(日本国内患者数が原則5万人未満)の部類だ。

 さらに国の専門家会議によると、感染者のほとんどが無症状か軽症で、予想される新薬の使用頻度は相対的に低い。それでもCSR(企業の社会的責任)だと割り切って開発する手もあるが、「一企業で開発するには事があまりにも大きくなり過ぎた」(大手製薬会社)。

 ワクチンに限れば、日本は「ワクチン後進国」といわれるほど接種に消極的な時代が続いた。それに伴い、日本勢が開発力に乏しいことも背景にあるようだ。

 とはいえ、目の前の重症の感染者を救う必要性は論をまたない。

 海外でも事情は似たり寄ったりのはずだが、よく見れば上表に登場する海外企業はチャレンジ精神が旺盛なベンチャーか研究開発費が潤沢なメガファーマ(巨大製薬会社)と両極端だ。「目立とうとファイティングポーズを取っただけの会社もあるのでは」と、国内の一部業界関係者は疑問視する。真偽は不明だが、実際に新型肺炎関連株として軒並みこれらの企業の株価は急伸している。