本当にBEVをスタンダードにするには、全固体電池よりさらに高密度、高耐久の硫化物系、シリコン系といった次世代バッテリーを低コストで作れる技術が要求される。

 短距離しか走れなくてもこまめに充電すればすむという意見もある。

 しかし、それはBEVの数が少ない導入初期に限っていえる話。台数が多くなれば、1000万台のクルマが月間1000km走るだけのエネルギーを延べどのくらいの時間で供給できるかといった、マクロの視点が必要になってくる。それによって充電ネットワークのインフラ整備や維持にかかるコストが決まってくるからだ。インフラに負担をかけないためには、クルマ側の性能を大幅に引き上げてやる必要があるのである。

 FCEVのほうも課題を抱える。現在の高圧水素タンク方式はコスト削減の余地がきわめて小さいうえ、性能向上も難しい。が、次世代技術とされる液体水素搭載方式の研究は難航を極めており、さらにその先にある究極の搭載法、水素吸蔵合金(金属に水素を吸収させる)については商用に耐えるための道筋すらついていないという状況だ。

ちょっと滑稽なのは
イギリスは他国頼みということ

 これらの研究を15年でクリアするのは「至難の業」といえるが、ちょっと滑稽なのは、イギリスは次世代電池や水素利用技術の研究のメジャープレーヤーではなく、アメリカ、中国、日本、ドイツ等の他国頼みということ。

 加えていえば、イギリス資本が主導権を持つ自動車メーカーも、もはや存在しない。

「2035年にエンジン車を禁止するから、イギリスでクルマを売りたければBEVやFCEVを持ってこい」と、上から言っているようなものだ。

 問題を解決する劇的なブレイクスルー技術が出てこなかった場合、イギリスは現在のBEVプラスアルファくらいの性能のクルマで脱内燃機関をやることになるが、そのときには物流から移動文化まで、社会のあらゆる面を大幅に組み替える必要が出てくるだろう。

 島国イギリスは欧州大陸側に比べるとクルマでの長距離移動文化はそれほど根強いわけではない。物流もルーマニアからデンマークまで農産物を運んだりする欧州大陸よりはずっと短距離。そこは他国に比べるとやや有利なポイントだ。