日本政府がPCR検査を
大々的に実施しない合理的な理由

 政府の新型肺炎への対応で最も批判が多いのが「PCR検査」に関するものだ。PCR検査とは、鼻や喉に綿棒を入れて粘膜を採取し、この中に存在するかもしれない遺伝子を増やすことで陰性か陽性かを調べる検査方法だ。新型肺炎に感染しているかどうかを検査する方法は、PCR検査しかないとされている。

 日本において、このPCR検査の実施件数が少ないことが批判されてきた。韓国では2月27日午前9時の時点で4万4157人が検査を受けたのに対し、日本では26日午後1時の段階で1890件にとどまっていた。実に韓国の23分の1の実施数だ(辺真一「韓国が日本よりも「国内感染者」が約10倍も多い3つの理由 日本は大丈夫か!?」)。中国メディアから「東京五輪を開催するために感染者を少なく見せようとしている」と指摘されるなど、批判は日本国内にとどまらず、世界中に広がっている。

 だが、PCR検査を日本政府が抑制的に行っていることは間違っていない。なぜなら、現在の検査の精度で検査実施数を大幅に増やせば、さまざまな面で医療崩壊を引き起こす懸念があるからだ。

 日本には、約2万の病院・クリニックがある。全面的にPCR検査を解禁して、仮に1つの医療機関で1回陽性が出れば、検体の数は2万となる。現在検査できる施設のキャパシティーの問題から、厳格なウイルス感染防御が必要なその施設を増やしてもなお、早期に検査処理能力を超えることは容易に想像できるだろう。

 そして、新型感染症となれば「指定感染症」として「隔離」することになる。おまけに、隔離は少なくとも2週間以上は続く。日本の指定感染症病院のベッド数は約4000だ。現在不足が予想されるため増やす方向とはいえ、ベッドに余裕があるわけではない。指定感染症病院については、北海道で早くも非常事態宣言がなされている。

 問題なのは、現在のPCR検査は、「偽陽性」「偽陰性」がそれぞれ8パーセントくらい出る精度の低いものだということだ、本当は新型肺炎ではない偽陽性の患者がベッドを占めると、本当に隔離が必要な患者のベッドがなくなってしまうことになる。また偽陰性と診断された人は、お墨付きをもらったことで外出してウイルスをばらまくことになる。

 さらに、全面的にPCR検査を解禁したときに問題となることは、新型コロナウイルスに感染している可能性がある人が病院に押し寄せることだ。そうすると高齢者や基礎疾患を持つ外来患者や入院している人に新型肺炎が感染するリスクが跳ね上がる。死亡者・重篤者を増やしてしまうことになれば、その病院は院内感染により、病棟閉鎖という非常事態に陥る可能性が高くなるだろう。