国土交通省がウェブサイト上でサービスを提供する「重ねるハザードマップ」は、国や自治体などの防災情報に基づき、ピンポイントでその場所が抱える災害リスクを誰でも地図上で調べることができる。「土砂災害」だけでなく、「洪水」や「津波」といったさまざまな災害リスクを重ねられるため、非常に使い勝手が良い。

 下図は事故のあったマンション周辺マップを重ねるハザードマップで実際に表示したものだ。京浜急行電鉄逗子線「神武寺駅」の東側一帯は、事故現場を含めて「土砂災害警戒区域」ではない場所を見つけるのがむしろ困難なエリアだと分かる。

 敷地の一部が崩落したマンションのように、購入した後から土砂災害警戒区域に指定されてしまったのであれば、人命はもちろん資産価値を保つためにも、管理組合が管理会社などと対策を考える以外に手がない。

 だが、マンションを購入する際に、物件の所在地だけでなく、周辺の状況も含めて重ねるハザードマップで確認しておけば、そのエリアがどういった場所であるか、ある程度は把握することができるのだ。

川崎市民は行政の責任を追及

 一方、マンションの資産価値を大きく下げる水害リスクの恐ろしさを認識させたのが、昨年10月の台風19号だ。

 川崎市が管理する多摩川の5カ所の排水樋管(ひかん)のゲートが閉じられず、川から水が逆流した結果、JR武蔵小杉駅周辺に林立するタワーマンションを含め、広範囲で深刻な浸水被害が起きたことは、記憶に新しい。

 川崎市は今年度中に浸水原因の検証結果をまとめる方針を示しているが、マンション住民を含めた地域住民からは行政の責任を問う声が日増しに大きくなっている。「天災ではなくむしろ人災だ」というわけだ。

 昨年12月には、地域住民などが「台風19号多摩川水害を考える川崎の会」を正式に結成。今年1月の勉強会では、マンション住民も被害の深刻さを訴えた。

「自分が住むメゾネット型のマンションでは5メートル近く浸水し、電化製品は上の階の照明しか残らなかった。3カ月たってもまだカビだらけの状態だ」

「台風19号多摩川水害を考える川崎の会」が1月に開いた勉強会
「台風19号多摩川水害を考える川崎の会」が1月に開いた勉強会には、100人を超える川崎市民が参加した Photo:Diamond

 団体の支援を行う川岸卓哉弁護士は言う。

「『逆流した場合は樋管のゲートを閉める』という国土交通省の通達に反し、川崎市は自らのマニュアルに沿って逆流が始まっても閉鎖をせず被害を招いた。自己検証で川崎市が自らの非を認める可能性は低い。第三者による検証委員会の設置が認められなければ、訴訟で賠償を求めていくことになるだろう」