関西電力の岩根茂樹社長が3月14日付で辞任し、後任に森本孝副社長が昇格した。「原発マネー還流問題」を調査していた第三者委員会が最終報告書を同日に公表したことを受けてのトップ交代だが、森本氏へ再建を託すことに社内外から失望の声が上がっている。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
「関電の常識に染まり切った人」
関係者はそう吐き捨てた
「二度とこういうことが起きないよう、最善を尽くすことが私の役割」。時折、用意された手元のペーパーに目を落として確認しながら、森本孝・関西電力新社長は就任の抱負を語った。自らの言葉で語ろうとしない姿は、電力業界にありがちな事なかれ主義の典型そのものに映った。
関西電力の役員らが高浜原子力発電所に立地する福井県高浜町の元助役、森山栄治氏(故人)から金品を受領していた問題を調査した第三者委員会は、3月14日午後2時から始まった会見で、約4時間にわたって最終報告書を説明した。この会見終了から約1時間後の午後7時、今度は森本孝新社長と岩根茂樹前社長が社長交代会見に臨んだ。
このトップ人事、選出したプロセスにも、選出された森本氏に対しても、社内外から失望の声が上がっている。
まずは、選出プロセスについてである。関電は第三者委から14日午前8時ごろに報告書を受け取った。そのわずか1時間後に、人事・報酬等諮問委員会を開催し、森本氏の社長昇格を決めた。
世間から拙速だと突っ込まれかねないこのスピード決定に対して、岩根氏は「報告書を受け取る前から、新体制のスタートをいち早く切れるようできることはやってきた。確かに時間は短いかもしれないが、しっかり議論いただいた」と釈明する。
森山氏から金品を受け取っていない森本氏が社長に就くことは、ほぼ既定路線だった。
社外取締役らで構成する「人事・報酬等諮問委員会」は、昨年12月に次期社長について森本氏らを含む取締役6人から内部昇格させる方針を決定していた。
しかも、昨年10月に岩根氏が社長辞任の意向を示して以降、森本氏は大手電力会社10社でつくる電気事業連合会の社長が集う定例会合には、関電の事実上の“顔”として出席していたのである。
「緊急事態にある関西電力のイメージを人事で刷新する必要があった。それなのに関電の常識に染まり切った人に立て直しを託すことが、前提になっていた。世間から変わっていないと思われるだろうね」。関電関係者は、そう吐き捨てた。