ECB
ラガルドECB総裁の手腕は、欧州に垂れ込める暗雲を吹き飛ばすことができるか(写真はイメージです) Photo:PIXTA

金融緩和を連続で強化したECB
緊急購入プログラムの中身

 欧州中央銀行(ECB)は3月18日に緊急声明を出し、いわゆる量的緩和に相当する資産買取プログラム(APP)を拡大すると発表した。パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)と名付けられたこの計画に基づき、ECBは2020年末までに購入する資産を3600億ユーロから7500億ユーロ(約89兆円)まで増額する運びだ。

 購入対象となる金融資産はこれまでのAPPで購入された国債、社債、CPなどであり、それ自体に変更はない。特筆すべきは、キャピタルキーと呼ばれる国債の購入に対する事実上の制限(加盟国の経済規模や出資比率に応じた買い入れ割り当て)の原則を緩和し、特定国の国債を柔軟に買い増すことへの道筋をつけた点にある。

 前回3月12日の理事会でECBは、APPの規模を年間2400億ユーロから同3600億ユーロに増額したが、その際、買い増しの対象が主に高格付け社債になることを示唆した。キャピタルキーを考慮すると本来なら購入すべきドイツ債やフランス債の建玉が不足しているため、苦肉の策としてECBは社債購入の増額に踏み切らざるを得なかったのだ。

 しかし、今回の声明でECBは、原則としてキャピタルキーに応じた国債購入を行うものの、同時により弾力的に対応する(in a flexible manner)ことを表明した。事実上、キャピタルキーを回避した国債購入への道筋を開いたことになり、ECBが足元で財政悪化懸念から金利が急騰するイタリア向けに支援のスタンスを見せたものと考えられる。

 またECBは、今後の政策運営に関して、その修正(revising)にも含みを持たせている。今後も場合によっては追加緩和を行う用意があることを示唆していると考えられるが、実態としては今回の措置によってECBの緩和余地は大きく狭まったと言わざるを得ず、今後の追加緩和への展望が描けなくなってしまった。

 前回理事会後の記者会見でECBのラガルド総裁は、市場関係者とのコミュニケーションに失敗、イタリア金利の急騰を促す失態を犯した。ECBがイタリア向けにOMTと呼ばれる非常時の国債買取プログラムなどを実施する意思があるのかを問われたラガルド総裁は、原則論に基づく回答に終始し、それが市場の失望につながったのである。