足立さんが大切にしている7つの価値観
1「Be Different」
前半の転職先で共通項があるんですけど、わかります? そう、業界が全然違いますね。すべて業績が最悪で、誰も行きたがらない、親が心配する会社ばかりなんです。
僕が新卒でP&Gに入った頃は、88年に就職活動をしてますから、「Japan as No.1」と言われた時代です。僕の大学の友達の9割以上は、日本の銀行・証券・保険・商社に行く時代。そもそもメーカーを選ぶ人も少ないし、外資系なんてありえない。しかもP&Gは当時、赤字でした。P&Gに入ったときは「ギャンブルの会社に行くの?(プロクター・アンド・ギャンブルだから)」と言われたんですが「いや、オムツとか作ってる会社だ」と言ったら、母親に泣かれました(笑)。
マクドナルドに行くときも、友達からは「絶対にやめたほうがいい」と言われました。でも、まあ面白そうだなと思って。この有名な本『V字回復の経営』の著者の三枝(匡)さんに昔パーティーでお会いしたときに「君は何回、修羅場をくぐったことがあるかね?」と聞かれたことがあって、そのときはピンとこなかったのですが、後で本を読んでみてわかったことは、「長くやることが経験ではなくて、大変なこと(修羅場)をやらないと、本当の経験にならない」ということです。できるだけ人がやらないことや新しいことや大変なことをやってきたら、こういうキャリアになりました。
それから、仕事をするときは「目立つこと」が大切です。日本では目立たないことが美徳とされていますが、自分が過ごしてきた外資系の世界では、目立たなかったらアウトなんです。会議では常に一番前に座って、「質問は?」と聞かれたら一番に手を上げる。二番目なんて誰も覚えてないですからね。これやらないと、アグレッシブな中国やインドの同僚に勝てません。この状況は、グローバルに展開している日本企業でも今は同じではないでしょうか?一番感じたのは、「良い仕事をしていても、認識されなければ、何もしてないのと一緒」だということです。
人事評価って、公平な評価なんてありえません。印象って大事なんですよ。印象がよければ評価が上がるなら、印象を上げればいいんですよ。だから、一生懸命に目立とうとしてました。もちろん出る杭は叩かれるので、目立つこと自体が自分に対するプレッシャーなんです。目立つようにするけど、叩かれないように、仕事だけは誰にも文句を言わせない結果を出さなくてはいけない、という自分との戦いでした。ただ、「Be Different」の本質は、むかし父に言われた「人と違う人生を生きたかったら、人と違う選択をしろ」ということに尽きます。