新型コロナウイルス感染症対策調査で、テレワーク実施者はわずか5.6%であることがわかった。著しく低いこの数字は、今も毎日、通勤電車に揺られながら出勤する人たちの、「テレワークを実施したくてもできない」という心の叫びを示しているように思えてならない。しかし、「できないからやらない」というスタンスを強行すると、経営者や管理職は大きなマネジメントリスクを抱えることになる。(モチベーションファクター代表取締役 山口 博)
テレワーク実施者は5.6%
「実施したくてもできない」人多数か
厚生労働省がLINEと協力して、新型コロナウイルス感染症対策の全国調査を実施した。3月31日から4月1日に実施され 2400万人が回答した第1回の調査結果に、私は驚いた。
密集、密着、密閉の「3つの密」を避けることに関して、密集を避けて「人がたくさん集まっている場所には行かないようにしている」は73.7%、密閉にならないように「換気の悪い場所には行かないようにしている」は62.0%の人が対策をとっている。しかし、密着を避けて「他の人と、近い距離での会話や発声をしないようにしている」人はわずか32.8%しかいない。
何よりも深刻なのが、「仕事はテレワークにしている」と回答した人が、わずか5.6%しかいないことだ。ほとんどの会社で、デスクは隙間なく並んでいる。出社すれば着席でも、すれ違いさまでも、近い距離で話をしなければならない場面は山ほどある。テレワークを実施する人が増えなければ、「3つの密」を避けることはできないのは当たり前だ。
LINEによるこの調査、そもそも回答した人は、感染症対策に関心の高い人だろう。同省HPでも、「予防意識が高い人ほど回答している可能性」があると記されている。予防意識が高い人は、さまざまな自助努力をしているに違いない。そのような100人のうち実に95人が、テレワークができていない。この数字からは、まるで「テレワークをさせてくれ」という叫び声が聞こえてくるようだ。
私は何もテレワーク実施率が100%でなければならないと言っているのでも、100%を目指さなければならないと言っているのでもない。実店舗の店員など、テレワークが不可能な職種もある。さまざまなビジネスの状況に合わせて、異なる対応の仕方があるだろう。しかし、テレワーク実施者がわずか5.6%というのは、いくら何でも低すぎだろう。テレワークを実施したいのに、会社の方針で出社を強いられている人が多分に含まれているに違いない。