テレワークができない
5つの理由

 テレワークができていないという人にその理由を聞いてみると、以下の5つに区分できるように思える。

(1)出社しなければ対応できない商品やサービスを扱っている
(2)テレワークを実施するPCやネット環境などが整っていない
(3)テレワークを実施すると評価が下がる恐れがある
(4)テレワークをするとチームワークが発揮されないと感じる
(5)当社からは感染者が出ていない

 これらの理由に納得して、テレワークを実施しないことを選んでいる人もいるだろうが、問題は、経営者や上司から、これらの理由でテレワーク拒否されたり、はっきりと言われなくてもにおわされて、テレワークを実施したくてもできないケースだ。

 部下から「テレワークをしないのですか」と聞かれたり、あるいは、「テレワークを実施したいのですが、よろしいでしょうか」と問われて、これらの理由を挙げて却下したことはないだろうか。一度でも心当たりのある人は、大きなリスクを抱えていると思った方がいい。

 特に緊急事態宣言が発令された7都府県の企業で、上記の理由を挙げてテレワークを却下することは、企業の安全配慮義務違反に問われる恐れがある。労働契約法第5条には「労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働ができるよう、必要な配慮をする」と規定されている。つまり、安全な作業環境の整備と、健康管理への配慮がされているかどうかが問われるのだ。

 安全配慮義務違反を疑われるということは、訴えられるリスクがあると思った方がいい。具体的には、各都道府県の労働局へ相談されたり、調停あっせんの申し出や、ひいては訴訟のリスクもある。労働局への訴えのみならず、労働争議の格好のトピックスだ。それだけではない。SNSにさらされるリスクは、誰にも、いつでもある。

 このように申し上げると、「商品やサービスなどは変えようがないし、PCやネット環境などの整備は今からすぐにできないので、テレワークができるはずがない」「テレワークを却下して何が悪いのだ」という反応を示す経営者や管理職がいる。中には、「会社全体のビジネスや制度や設備の問題なので、1人の上司としてできることはない」という諦めに満ちたリアクションもある。