実は直面している
大きなマネジメントリスク

 一度に全員に対してテレワークを実施しようとするから、テレワーク実施のハードルは高くなるのだ。自分のチームでテストケースとして実施する、チーム内でも一部のメンバーに対して実施してみる、通勤時間の長い人や業務上影響の少なそうな人から実施してみるという方法もある。

 仮にテレワークを実施できなかったとしても、安全配慮義務を履行することはできる。それも、会社の決定を待たずとも、一上司として、自分の判断で、自分のチームだけで実施したり工夫できることはさまざまある。

 毎日の体温測定をする、昼食休憩時間を拡大して混雑を避ける配慮をする、消毒液を増やす、防火扉やシャッターを下ろす、交代制での勤務にする、時差出勤を奨励する、直接の書類の受け渡しをしないで済むように書類箱を設置する…これらはいずれも、テレワークを実施していない私の取引先が、作業環境の整備と健康管理への配慮策として実施していることだ。

 テレワークを「認めるか」「認めないか」の二律相反の選択肢で考えるから、「テレワークはできない」という返答になってしまう。テレワークを却下するフレーズは一切用いずに、テレワークの代わりに、可能な範囲で取り得る作業環境の整備と健康管理への配慮策を伝えれば、訴えられるリスクを回避できる。

 テレワークを実施すると評価が下がることを回避する方法もある(「在宅勤務で『評価が下がる』の疑心暗鬼を解消する5つの方法」参照)。また、テレワークによりチームワークを損なわない方法もある。

 テレワークだから評価が下がっても仕方ない、テレワークだからチームワークが発揮されてなくても仕方ない、というような諦念がはびこっている会社は、無策だと言わざるを得ず、社員満足度は著しく低下する。「当社は感染者が出ていないからテレワークを実施しない」と言い放つ企業は、社会的責任を果たしていないとみなされて社員が離れていく典型例だ。

 テレワークできる職種なのに許可していない企業は、安全配慮義務違反に関する深刻なリスクを抱えている。加えて、社員の満足度、離職率を下げるリスクもある。私たちは新型コロナウイルスの感染リスクに直面しているが、同時に、部下に対するマネジメントリスクに直面していることを意識しなければならない。感染リスクが終息する頃に、今度はマネジメントリスクが顕在化しかねない、ということを恐れるべきである。