まずは「レムデシビル」
国際医療研究センターの戦略

 国際医療研究センターは、今後のCOVID-19の包括的治療・研究開発戦略について次のように考えている。

新型コロナウイルス肺炎の治療薬の開発戦略
出所:国立国際医療研究センター「COVID-19 に対するRemdesivir の安全性および有効性を検証する 多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照比較臨床試験について」P15
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 まずは肺炎になっていない軽症・中等症の患者に対して。

「非常に大事なのは肺炎の有無です。肺炎にさえならなければ人工呼吸器も人工心肺も必要ない。ということで、肺炎がない患者さんに対しては、肺炎を防ぐ効果の有無をぜんそく治療薬として承認されている『シクレソニド』(商品名:オルベスコ)投与する研究を今計画しており、できるだけ早く始められるように準備しています」

 すでに肺炎を起こし、重症化している場合には、前章で紹介したレムデシビルの投与が検討される。

「肺炎がある方に対しては、“治験適格性”があるかどうかを見極め、なおかつ、ご本人の同意がいただければ、レムデシビルの治験に入ります」

 とはいえ、治験適格性がない場合もあれば、同意が得られない場合も当然起こりうる。

「そういう方々に対して、現在議論の俎(そ)上に上がっているのが、アビガンとナファモスタットであります。さらに、それ以上に重症の患者さんに対しては今、救命治療免疫調整薬などが効くのではないかと議論されています」

 つまり、病状によって段階的に候補薬を絞り、効果と安全性を評価していくというのが、同センターの戦略であり、レムデシビルはその第一弾なのである。

「現在、わが国で検討中の候補薬は5剤あり、ウイルスの増殖を抑える機能を持つ治療薬が期待されています。COVID-19は人類の危機。効果、安全性、供給可能量等を総合的に判断し、早急に標準治療薬を決めることが重要です。無駄な時間を費やす余裕はありません」

 では今回の治験で使用される、レムデシビルとはどういう薬なのか。

「エボラ出血熱の治療薬として開発した薬です。ウイルスRNA産生の減少を引き起こし、RSウイルス、コロナウイルスなどの1本鎖RNAウイルスに対し、抗ウイルス活性を示すことが見いだされています。実際の臨床現場では、2019年のエボラ出血熱流行時に使用され、どのような有害事象が起こるかといった安全性のプロファイルも確立されています。人間に投与しても安全であることは確認済ということです。また試験管内ではありますが、今回のSARS-CoV-2を含む複数のコロナウイルスでの抗ウイルス活性も示されています」

 5剤ある候補薬のなかからレムデシビルを選ぶにあたっては、培養細胞にウイルスを感染させ、48時間後のウイルス増殖に及ぼす効果を評価する方法をとった。

「そのなかで5剤の候補も含むさまざまな薬が比較されたわけですが、レムデシビルのウイルス増殖を抑える効果が最も高く、その次は抗マラリア薬のクロロキンでした。一方で、人間に投与した場合の安全性は、エボラ出血熱の際の治験で分かっています。ということで、レムデシビルから治験を始めてみることになりました」