「戦時体制」の予算を
編成してはどうだろうか

 現金給付が「減収世帯に30万円」から「一律10万円」の給付に変わることで、来週国会では緊急経済対策を含む20年度補正予算案の審議が始まる。しかし、「平時の経済をV字回復させる」ような経済対策は「ガードを上げ下げ」の「有事」には効果がない。いったん破棄して完全に組み替えるべきだ。

 この際、あえていえば「戦時体制」の予算を編成してはどうだろうか。ウイルスとの戦いは、まず「家にいて人に会わないこと」が基本だ。現金給付を一律30万円まで増やして、仕事をせずに当面家にいてもらう。財源は36兆円ということになるが、補正予算は108兆円あるのだから、問題ないだろう。

 次に、ウイルスとの“戦争”の武器は、「マスク」「フェイスシールド」「防護服」、そして「病院」だ。この製造に徹底的にリソースを集中させる。

 日産自動車が、3Dプリンタでフェイスシールドを製造すると表明している(「日産が新型コロナ対策支援に名乗り、3Dプリンタでフェイスシールド製造」〈MONOist〉)。本業での販売拡大が見込めない企業は、医療物資の増産に協力してもらったらどうだろうか。製造した分は、政府が緊急経済対策で使うはずだった予算で買い取ればいい。

 日本中の工場で製造して日本国内の医療機関に物資が十分にいきわたる状況になれば、海外に輸出することも考えればいい。欧州やアフリカ、南米などを支援するのだ。中国製のマスクなどの信頼性が低いという現状もある。「ものづくり」に定評がある日本が世界に果たすべき貢献となる。

コロナからのV字回復対策を捨て、「戦時体制予算」を編成せよ本連載の著者、上久保誠人氏の単著本が発売されました。『逆説の地政学:「常識」と「非常識」が逆転した国際政治を英国が真ん中の世界地図で読み解く』(晃洋書房)

 新型コロナウイルスの感染から回復した人、今後始まるであろう「抗体検査」で抗体を持っていると判定された人が社会復帰する際、所属する会社の本業が回復しない場合も多いだろう。そういう方には、工場での医療物資の増産に臨時で従事してもらうことを考えてもいい。

 さらに、現在、外出自粛や休業の要請などで小池百合子・東京都知事などに名指しされて青息吐息の飲食業の方々には、医療従事者や行政に携わる方の食事作りに全面的に協力してもらう。政府が全部買い取ればいい。

 スタジアムや練習場を仮設の病院や軽症者の受け入れ施設の建設に貸し出したスポーツチームには、補償金を出せばいい。イベント施設も仮設の病院にして、その施設でイベントが予定されていたアーティストや関係者にも補償金を出す。繰り返すが、108兆円もの大規模な補正予算が組まれていたのだ。「V字回復のための対策」を後回しにすれば、できないことなど何もない。

 新型コロナウイルスの感染が完全に終息したときは、ありとあらゆる物の製造がはじまり、経済は自然に動き出す。それほどカネを使わなくても、経済はV字回復する。ゼロになれば、あとは上がるしかないのだから。今は、未曽有の危機を乗り越えるために「戦時経済」を組み、全ての資源を投入する時なのかもしれない。