「アフターコロナ」を見据えて提案したい
地方主権推進を御旗にした共闘

 この連載では、自民党政権による中央集権体制は限界を見せており、これからは東京や大阪、京都、名古屋、札幌、仙台、広島、福岡などの大都市に政府の権限の多くを移管し、その大都市の周りを市町村が囲み、社会保障や福祉などの行政サービスを提供する「地方主権」を実現すべきだと論じてきた(第204回)。新型コロナウイルスの感染拡大が浮き彫りにしたのは、まさに自民党の限界と地方の可能性だろう。

 新型コロナウイルスとの闘いに勝利するために、そしてその後の新しい日本を創るためにも提案したいのが、「地方主権」を推進する勢力の「共闘」だ。あえて大胆に提言すれば、新型コロナウイルスの感染拡大の「第一波」が収まったときか、それ以外でもどこかいいタイミングで、小池都知事、鈴木道知事、大村県知事らと、吉村府知事が副代表の日本維新の会、そして玉木雄一郎代表率いる国民民主党が、「地方主権」を掲げた新党を立ち上げてはどうだろうか。

 彼らは、17年の総選挙時の「希望の党」を巡ってゴタゴタした因縁がある(第168回)が、そんなものは乗り越えて共闘すべきである。いわゆる「野党共闘」がうまくいかないことに対して「小異を捨てて大同につけ」と言われるが、共産党との共闘などに未来はないので捨てるべきだ(第174回)。地方勢力の共闘こそ「大同につく」価値がある、真の野党共闘である。

 まず共闘すべきは、緊急経済対策の組み換えだ。補正予算を速やかに通過させるのは重要だ。しかし、「マイナポイントにキャッスレスの推進・拡充」や「観光・消費の国民的キャンペーン」「デジタル遷都」などの、頭がクラクラするような意味不明な施策はすべて停止して財源を地方に回せと、補正予算通過後も粘り強く主張し続けていくべきだ。

 なぜなら、緊急事態宣言が解除された後も新型コロナウイルス拡大の「第二波」「第三波」が必ずやってくる。そのときには、尾身茂・専門家会議副座長が訴えるように感染拡大防止のために「ガードを上げる」ことになり、経済活動は二度、三度とストップする。そのとき、緊急経済対策の組み換えという議論に必ずなるからだ(第239回・P7)。

小池都知事らが安倍首相のお株を奪う今こそ「地方主権で政権交代」の好機本連載の著者、上久保誠人氏の単著本が発売されました。『逆説の地政学:「常識」と「非常識」が逆転した国際政治を英国が真ん中の世界地図で読み解く』(晃洋書房)

 ここで先頭に立つのは、現在国会で議席を持ち、「ロックダウン法案」など提案型の姿勢で評価を高めている玉木代表だ。それを、発信力がある小池都知事や吉村府知事などが援護射撃する。現金給付が「減収世帯に30万円」から、「一律10万円」に世論の猛批判で変わったのだ。世論が動けば政策は必ず変えられる。

 安倍首相が「世界最大級」と誇る緊急経済対策は総額117兆円もある。無駄な施策を全部撤回させて、各都道府県に1兆円ずつでも自由に使えと配ったほうが、現金給付や休業補償だけでなく、医療物資の生産も飲食店の支援も、それぞれの地域の事情に合わせて機動的にできるのは間違いない。

 新型コロナウイルスの感染拡大が終息したら、新党を結成して総選挙で政権交代を狙う。新党は、政権担当経験がない素人集団だった民主党のときとは違う、地方での圧倒的な実行力を引っさげての登場だ。政策は、「廃県置藩」に匹敵するくらいの、地方主権を軸とした明治以来の大胆な国家改革を打ち出すべきだ。

 新型コロナウイルスは、社会のすべてを変えてしまうだろう。今までの常識はまったく通用しなくなる。新しい国家、国際社会のあり方を構想する勢力の出現が望まれているのは間違いない。