今後、IT先端分野を中心に力を発揮してきた経済と、そうではない国の差がこれまで以上に明確化するはずだ。今後、5G通信関連を中心にIT先端分野の需要は徐々に高まるとの見方は多い。わが国はそうした変化に対応するために、産業構造を転換することを考える必要がある。

コロナ禍の経済状況と
わが国の産業構造

 コロナ禍の真っただ中、世界経済のファンダメンタルズは全体として悪化している。個人消費を中心に世界経済を支えてきた米国では失業が急増している。シカゴ地区連銀のエコノミストは、コロナショックによる雇用喪失を加味して4月の失業率を計算すると25.1%から34.6%の間に位置すると推計している。

 その中、各国の産業構造の特徴によって、経済の状況にかなりの違いが出ている。世界的に、自動車の需給は大幅にだぶついている。汎用機械、化成品などの業況も厳しい。自動車、汎用機械などはわが国の得意分野だ。米国では、航空機および航空業界の先行き懸念が高まっている。当面、航空需要が戻らないとの見方から著名投資家のウォーレン・バフェット氏は米国の大手航空株をすべて手放した。

 一方、5G通信やデータセンター関連を中心にIT先端分野の成長は続いている。ある意味、コロナショックがIT先端分野における米国のGAFAや中国のBATHの取り組みを加速化させている。感染対策のために人の外出制限が徹底された結果、高速通信やデータ処理へのニーズが加速度的に高まった。それが、世界的なデータセンターの増強、5G通信の拡大の背景にある。オンラインでの学習や、ドローンを用いた物流や社会の監視には、高速かつ安定した通信体制の整備が欠かせない。この分野で米中の競争力は高い。わが国はIT先端分野への対応が遅れている。

 以上の状況をまとめると、次のようになるだろう。

 IT先端分野で競争力を発揮してきた米国と中国は、アフターコロナを見据えた取り組みの先頭を走っている。台湾がそれに続く。台湾はトップの強いリーダーシップによって感染を食止め、IT先端分野の変化を追い風に変えている。1〜3月期、台湾積体電路製造(TSMC)の純利益は前年同期からほぼ倍増した。

 それに次いで、韓国ではスマホやメモリチップ分野でサムスン電子やLG電子が健闘している。韓国が感染の拡大を抑えたことは経済活動にプラスだ。対照的に、ITよりも自動車、汎用機械などの製造業で競争力を発揮してきたわが国やドイツを中心とする欧州各国の業況は相対的に厳しい。