ヒトは、C. jejuniに汚染された肉を食べることでこれに感染し、出血性の下痢を発症する。基礎疾患がある場合には重症化することがあり、健康が長期的に損なわれるケースもある。
今回の研究では、農薬が多用された結果として生じている、抗菌薬に強い耐性を示すようになったC. jejuniの遺伝的進化を調べた。その結果、20世紀の急激な畜牛数の増加に伴って、畜牛特異的な細菌株が出現したことが明らかになった。
畜牛の餌や、解剖学・生理学的変化も、C. jejuniがヒトへ容易に感染するような遺伝的変化につながった可能性があるという。さらに、動物の国境を越えての移動や集約的な飼育方法が、この細菌の世界的拡散につながったと、著者らは付け加えている。
「過去数十年間で、野生動物からヒトへと宿主を変えたウイルスや細菌がいくつか出現している。HIVはサルから、H5N1インフルエンザはトリからであり、現在流行している新型コロナウイルスはコウモリからではないかと疑われている。今回の研究は、環境の変化に加えて家畜との接触機会の増加によって、動物由来の微生物がヒトの感染症として拡大していることを示している」とSheppard氏は述べている。
同氏は今回の研究結果の影響について「この現状は、農業にはより大きな責務があることへの理解を促す警鐘と言える。その理解によって、感染症が突然アウトブレイクする将来的なリスクを抑制することができる」と語っている。(HealthDay News 2020年5月7日)
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