◎プレゼンという「目的」に集中を

 初診後3カ月くらいたったある日、Aさんは「先日、会議の前に便意を感じましたが、会議の時間が迫っていて、自分のプレゼンもあったので、そのことをいろいろ考えていたら、便意がいつの間にか治まりました。それ以降、便意が多少あっても、便意はあるがままにして会議のことをいろいろ考えるようにしています」と、Aさんに自分をあるがままに受容する姿がみられました。

“MORITA”では「目的本位」という言葉があります。これは、気分はそのままにして、自分の目的を自覚して行動するということです。逆に「気分本位」という言葉もあります。これはその時の気分で行動を決めるということです。

 Aさんは便意をあるがままに放っておいたために「気分本位」にはならず、会議でプレゼンするという「目的本位」の行動により便意にとらわれていた心が動きました。それにより、症状を強める精神交互作用も抑えられました。

講演のたびに下痢が襲う
40代後半女性の相談

 次は、40代後半の女性(大学講師)Bさんの事例です。

 Bさんはその分野では有名で、各地で講演を頼まれます。しかし、以前から講演当日は緊張して、朝から下痢がみられました。Bさんはそれを身体の癖だからしょうがない、と受け止めていました。

 ある日、舞台の袖で司会者が自分の経歴紹介を始めると、急に便意が生じ、仕方なくトイレへ行きましたが、司会者の機転で無事講演は開始されました。その後も、同じ状況では必ず便意が起こり、講演の前には必ずトイレへ行くようになりました。しかし、それでも便意は無くならず、過敏性腸症候群の書籍を読んで、伊藤医師を受診しました。

伊藤医師の回答
「講演の工夫に知恵を絞ってみませんか」

 Bさんは頑張り屋で、大学でも「仕事はBさんに頼めば大丈夫」と頼りにされています。Bさん自身、几帳面で完璧主義、他人の頼みを断れない性格と言っています。

 各地での講演はほぼ同じ内容で、話すこと自体に不安や緊張はありませんでしたが、経歴紹介の時間が問題でした。

 Bさんは「経歴紹介が始まると、便意が来ないか不安で、何とかしようとしても何ともならないのです」と語りました。