先週木曜日の12月18日、久しぶりに前向きなニュースを目にした。破談の可能性も囁かれていた、三洋電機買収を巡るパナソニック(旧松下電器産業)と三洋大株主の金融3社(三井住友銀行、大和証券SMBC、ゴールドマンサックス)の交渉が決着したのだ。
このニュースは日経新聞だけが朝刊で報じており、他紙は夕刊に後追いの記事を小さく載せていただけにとどまった。おそらく日経の記者が一生懸命取材していたのだろうが、企業の広報ならば、こうした類のニュースは日経に先に出して恩を売りたいところだろう。記事の出方としても、パナソニックの思い通りに物事が動いているとの印象を受けた。
新聞報道をベースに交渉の経緯を振り返ると、パナソニックはまず11月下旬に、金融3社に対して、三洋の公開買い付け(TOB)価格をとりあえず1株120円と提示したらしい。これは当時の三洋の株価より安く、金融3社、特にゴールドマンサックスにとって納得のいかない数字であったようだ。日経によれば、それでも三井と大和はTOBに応じていいという様子だったが、ゴールドマンがその株価では受け入れらないと抵抗したという。
ちなみに、金融3社は、普通株に転換できる優先株で三洋にカネを出しているが、転換権をすべて行使すると、合わせて議決権の約7割を占める。つまり、3社を口説くことで、パナソニックは議決権の過半を取得することが可能になる。ただ、3社が保有する優先株には、それぞれ株を売る時、残る会社がそれを優先して買い取れる「先買い権」とよばれる特権が付いており、ゴールドマンがその権利を行使すれば、買収そのものが不可能になってしまうリスクがあった。相手は手強いゴールドマンだから、パナソニックといえども簡単ではないだろう、前途は多難かと心配された。