単利と複利は大違い
同じ数の繰り返しの掛け算を拡張したのが、高校で学ぶ指数関数だ。指数関数は私たちの生活に最も密着した関数とも言われる。中でも最も身近なのは利息計算における複利法だろう。
複利法とは「一定期間の利息を元金に加え、その元利合計を次の期間の新元金として利息を計算する方法」のことだ。これに対し、単利法というのは「前期間の利息を元金に繰り込まず、元金に対してだけ利息を計算する方法」のことをいう。
最初の年に預けた元金が100万円で年利(1年ごとの利息)が10%だとすると、単利法でも複利法でも、1年後の元利合計は
100万円+100万円×10%=110万円
だが、2年後以降は異なる。複利法の場合、1年後の元利合計110万円全体に対して10%の利息がつくので、2年後の元利合計は
110万円+110万円×10%=121万円
だが、単利法の方は最初の元金に対してしか利息がつかないので、2年後の元利合計は
110万円+100万円×10%=120万円
だ。「なんだ、たった1万円しか違わないのか」と思われるかもしれない。しかし、これを何年か続けていくとその差は歴然だ。
元金100万円、年利10%で10年預けた場合の、複利と単利を比較すると、最初の数年こそほとんど変わらないが、10年後には単利の場合は200万円。しかし、複利の場合は約260万円となり、およそ60万円もの差がついてしまう。複利の方は最初の100万円に1・1を繰り返し掛ける累乗になっているのに対して、単利の方は、最初の100万円に10万円を繰り返し足していくだけになっているからだ。
もっとも、現在(令和2年)は超低金利時代なので、銀行預金の利息はどんなに高くても年利0・3%程度だろう(ネット銀行の定期預金)。この場合、元金100万円で10年預けても、複利の場合は103万408円、単利の場合は103万円なので、わずか408円しか差がつかない。
(本原稿は『とてつもない数学』からの抜粋です)