歴史上に名を残す偉人は、当然「すごい」ことを成し遂げている。しかし、彼らとてみな人間。「すごい」と同じくらい「やばい」面だってあるのだ。
そんな偉人たちの「すごい」と「やばい」を両面から紹介する本が、書店で売れ続けているという。歴史人物の思わぬ「やばいエピソード」とギャグ漫画家の和田ラヂヲのシュールなイラストが人目をひく。各時代の概要をざっくりまとめた漫画は、それぞれ横山了一さんと亀さんが担当した。
児童書として企画された本書だが、じつは大人にも売れている。
それもそのはず、ふざけた本かと思いきや『やばい日本史』は東京大学教授の本郷和人さんが、『やばい世界史』は東京大学名誉教授の本村凌二さんが監修を務めているのだ。
今回は監修の二人にお集まりいただいた対談の第2回。「子どもが歴史好きになるには、どうすればいいのか?」を本気で考えてもらった。

第1回目はこちら

(聞き手:滝乃みわこ)

東大教授はいかにして歴史が好きになったのか?

――『東大教授がおしえる やばい日本史』『東大名誉教授がおしえる やばい世界史』は「子どもに歴史好きになってほしい」という親御さんにもじつは好評だといいます。なかなか歴史に興味をもってくれない子どもも多いですから。先生方は、歴史の研究者になられたわけですが、一体どんなきっかけで興味を持つようになったんですか?

本郷和人(ほんごう・かずと)
東京大学史料編纂所教授
東京都出身。東京大学・同大学院で石井進氏・五味文彦氏に師事し日本中世史を学ぶ。大河ドラマ『平清盛』など、ドラマ、アニメ、漫画の時代考証にも携わっている。おもな著書に『新・中世王権論』『日本史のツボ』(ともに文藝春秋)、『戦いの日本史』(KADOKAWA)、『戦国武将の明暗』(新潮社)、『上皇の日本史』(中央公論新社)など。

本郷和人(以下、本郷):僕はもう子どものときから歴史が好きだったから、そう聞かれても、ごく自然に好きになりましたね。

――自然に。何かキッカケとかは覚えてらっしゃらないですか?

本郷:僕の場合は、すごい簡単でした。小学校4年生になる前に、親父がちょっと奮発して、京都・奈良旅行をしてくれたんですよ。それで、京都・奈良に10日間ぐらい、ずっとお寺を巡ったんです。そうしたら、仏教芸術がすごい好きになっちゃった。

本村凌二(以下、本村):そこで仏教芸術に反応するというのは、めずらしいよね。

本郷:たぶんね、じじくさい子どもだったんです。僕、祖父ちゃん子だったから。言葉遣いなんかも大人びていて「それは〇〇です」とか敬語で話してたらしいの。それを見てなんとなく親父も「仏教とか好きかもしれないな」と思ったんじゃないかな。もうビンゴで、薬師寺の薬師三尊とか、東塔とか、すごく感動しましたね。それで歴史が好きになった。

本村凌二(もとむら・りょうじ)
東京大学名誉教授。博士(文学)
熊本県出身。東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。東京大学教養学部教授、同大学院総合文化研究科教授を経て、早稲田大学国際教養学部特任教授(2014~2018年)。専門は古代ローマ史。『薄闇のローマ世界』(東京大学出版会)でサントリー学芸賞、『馬の世界史』(中央公論新社)でJRA賞馬事文化賞、一連の業績にて地中海学会賞を受賞。著書は『はじめて読む人のローマ史1200年』(祥伝社)『教養としての「世界史」の読み方』(PHP研究所)『地中海世界とローマ帝国』(講談社)など多数。

――お父さまが興味の芽を感じてくれたのがきっかけだったんですね。

本郷:ええ、日本はその意味でいうと恵まれているよね。世界的に見ても、いっぱい文化財が残っているから。実物を見に行ってみるっていうのも悪くないかもしれません。

――そうですね。本村先生も、子どものころに歴史好きになったんですか?

本村:遡って考えると、中学1年生のときに映画『ベン・ハ-』を見た体験は大きいかもしれない。ローマ帝国時代のお話なんだけど、この映画の影響で、歴史=ローマだ! みたいなイメージを持ったのをなんとなく覚えています。

本郷:それで、歴史に興味を持った?

本村:いえ、「歴史学」という意味で歴史を意識したのは、大学生になってからです。大学に入ったとき「ギリシア語とかラテン語を勉強しなさい」って、ある人文科学書に書いてあったんです。それを無条件に信じて勉強したら、ラテン語がわかるようになった。そしたらだんだん「これ、使わないともったいないな」って思い始めたわけ。

本郷:発想がすごい!