「コロナ回復期への対応」と
「統合的な災害危機管理に基づく対応」を併せて検討
新型コロナウイルスの最初の症例が確認されたのは中国・武漢でしたが、その中国では既に終息期を迎えつつあるといわれています。そして、中国が本来のサプライチェーンの役割を取り戻そうとしていることは、世界的にも注目を集めるところです。このように、中国や日本を含めたアジア諸国が回復に向かいつつある一方で、南米、アフリカのようにまだ感染が拡大すると予想されている国々もあります。
昨年までのような通常のサプライチェーンの状態に回復する見込みがどの程度あるのか。その判断によって、回復を待つか、他のサプライチェーンを模索するか、見直すべき方向性が決まるでしょう。
ただ今回のコロナ禍は、サプライチェーンのみならず、企業の労働環境や顧客との関係性、ITの在り方など、「本当に必要なものは何なのか」を全ての経営者や従業員に問うきっかけになっています。それを踏まえると、サプライチェーンの見直しは「コロナ禍の混乱に対応する」という短期的な視点だけでは不十分です。
ここはいったん、現行のサプライチェーンの構造や業務フローを精査し、今回の「コロナ回復期への対応(第1フェーズ)」と、巨大地震(南海トラフ地震/首都直下地震)やスーパー台風などの豪雨暴風被害、次に来る可能性があるパンデミック感染症も考慮に入れた「統合的な災害危機管理に基づく対応(第2フェーズ)」を併せて考える必要があります。
サプライチェーン全体を見た時に、国内のリスクと海外のリスクには何があり、そしてリスク発生箇所としてはどんなところが考えられるのか。また、それらをどうすればコントロールできるのか。コントロールできない場合の代替案は何か、を考えなければなりません。
この時期は顧客や取引先企業とも同じ境遇にありますから、企業の根幹に関わる“改革”の検討について同じ目線で話ができる、またとないチャンスです。物流システムの構造変革を含め、今後10年を見据えたサプライチェーンを、地震、スーパー台風、次のパンデミック感染症などに対応した総合的な危機管理の一環として見直すことを併せて提案します。
本質的に企業が単体で行うBCPには限界があります。現在、取引関係にある企業同士でテレワークによるプロジェクトチームを立ち上げ、企業の垣根を超えたチームとしてのBCP、本格的なサプライチェーンBCPを今こそ構築していただきたいと考えます。
(プリンシプルBCP研究所 所長 林田朋之)