――「接触機会5割」とは、具体的にはどのような生活様式を指しているのか。

 外出制限のみで5割の接触機会の削減を達成するのは現実的に不可能であり、社会経済活動に与える影響が大きい。また高齢者や子どもの心身の健康、家庭内暴力などの問題、メンタルヘルスにも重大なリスクとなる。

 そこで、外出制限は無理のない範囲とし、外出する際の接触率を約5割削減することで、総合的に目標を達成するのが「接触機会5割」だ。

 これは物理的に人と接触する回数を5割削減することを意味するのではない。マスクの着用、手洗いの徹底や換気などにより、感染リスクのある行動を5割削減することを指す。つまり、「社会経済活動を再開しながら、接触の機会をトータルで5割削減する」ことを個々人が達成することが何よりも重要になる。

 ただし、専門家会議が示している新しい生活様式の中でも「2メートルの身体的距離」を保つことは、業種によっては経済的に大きなダメージとなっている。そこで、「2メートルの身体的距離を絶対視しない」というのも今回の接触機会5割を達成する中でお伝えしたい戦略の1つだ。

 現在、業種ごとにガイドラインを策定していただいているが、それは2メートルの身体的距離を非常に重視しているものが多い。しかし、3密を避ければ、そこまで厳しくする必要はない。そこで現在、ガイドラインの簡易版の作成を依頼している。

 また、現在の感染者数は地域差が大きく、医療提供体制も大きく異なることから、全国一律の自粛要請は経済的に効率が悪いことも明らかだ。そのため、都道府県よりもさらに細分化した地域の生活圏(天気予報の発表区域など)ごとに、モニタリングをし、各地域の状況を分かりやすく伝えるとともに、段階的な経済活動の再開の基準を示していくことが必要である。

 各都道府県は、地域の大学の医学部・公衆衛生学教室と連携してR値を算出することでモニタリングを続け、R値「1以下」を保てているか、接触機会5割以下となっているかを確認しながら、経済活動の再開のためにPDCAサイクルを回していくべきだろう。