世間は「医療従事者のみなさんありがとうございます」と表向きでは口にしつつ、子どもを保育園などに預けようとすると断られるなど、家族も差別にさらされた。もともと、働き方改革が最も進んでいない業界であり、時間外労働も常態化している。

 そして、コロナ禍における最大の受難、それは「失業の危機に瀕した医者が少なからずいた」という事実である。

 医者の中にも、「不要不急」はあり、他の職業と同じように市場から淘汰される危険があるなんて、彼ら自身が一番想像していなかったのではないだろうか。

 コロナ危機も収束に向かいつつあった5月末、医療従事者への賞賛と感謝を込めた、ブルーインパルス(航空自衛隊のアクロバット飛行チーム)のパフォーマンスを見て、医者たちの胸に去来したものは、達成感か、それともコロナ禍で浮き彫りになった、不透明な未来への漠然とした不安か――。

 特集では、この未曾有のパンデミックの中、医療界で起きた真実をひもときながら、医者という職業の最新事情、そして医学部受験の趨勢に改めて迫っている。

(ダイヤモンド編集部 野村聖子)