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ソーシャルディスラプト最前線

【新連載】ソーシャル上の"評判"によって、
既存ビジネスの基盤は、いかにディスラプト(破壊)されていくのか

岡本彰彦 [Recruit Strategic Partners, Inc. 代表]
【第1回】 2012年9月4日
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 また、不動産売買に係る仲介会社の手数料は成約価格に連動するのが一般的な商慣行となっているが、これでは成約価格が高ければ高いほど仲介会社の手数料がアップする仕組みであるため、仲介会社のモチベーションが成約価格を下げる方向に向くことはなかった。

 しかし、Redfinは自社社員の仲介業者の報酬を固定給とインセンティブという体系に変えた。特にインセンティブについては成約価格に連動するのではなく、ユーザーの満足度に連動して上がるシステムとした。そこが革命的にこれまでとは違うポイントだった。

 そのため、Redfinの仲介業者はユーザーが望むことを実現しようと努力する。もちろんユーザーが望むのは「いい家を安く買いたい」ことなので、Redfinの仲介業者はできるだけ安く買えるように努力する。

 ただし、このメンタリティは既存の商慣習の中からは生まれない。

 Redfinはこの仕組みを機能させるために、優秀な大学生などを新卒で採用し、社内で独自教育を施し、不動産仲介資格を取得させることで仲介業者の自社社員化を実現している。

 今までにないサービスシステムを機能させるためには、サービスを提供する社員の採用から変革させなければ機能しないことをRedfinの事例は示唆している。

 結果、Redfinを利用して家を購入した場合、仲介手数料のディスカウントと物件価格の値下げとを合わせておおよそ200万円前後のユーザーのコスト削減効果があると言われており、そのビジネスは急速にユーザーに支持された。つまりRedfinは、それまでの不動産業界にあった商習慣に潜んだ不合理性を打破することで急成長し、今では“不動産業界のザッポス”とまで呼ばれるようになった。
※ ザッポスとは、2009年に12億ドルの評価額でアマゾンに買収された、オンラインの靴の小売店。徹底した顧客満足度の追求により「最もファンを集めたオンラインEC」とも呼ばれる。その特徴は「ザッポス最強伝説」でも詳しく解説されている。

 RedfinはAirbnbのようにソーシャルメディアを直接活用した例ではないが、ソーシャルメディアが発達したことにより、Redfinのサービスは口コミで伝わった。顧客満足度を高めることを目指したビジネスモデルのため、口コミされやすかったという面もある。そして既存企業をディスラプトした。ソーシャルメディアがディスラプトしやすい環境をつくっている、と言えるだろう。

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岡本彰彦
[Recruit Strategic Partners, Inc. 代表]

株式会社リクルートの投資会社であるリクルートストラテジックパートナーズの代表取締役として、コーポレートベンチャーキャピタルファンドを活用し、日本のみならず、北米、東南アジアをはじめとしたグローバルな投資·事業開発活動を推進する。現職就任以前は、銀行、ベンチャーキャピタル、証券会社などでストラクチャード·ファイナンスや新事業開発に従事した後、2007年にリクルートに入社し、主に同社住宅カンパニーにおける事業開発の責任者とブランドマネジャーを担当。

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Facebook、Twitterといった、いわゆる「ソーシャルネットワーク」が日々の生活にかかせないもの、あえて言えば"必須のインフラ"となったことで「ビジネス」の変化が急激に進んでいる。
電力インフラの整備が、モータリゼーションの加速が、パーソナルコンピューターの普及が、かつてビジネスの変化を決定づけたように、いま現在、「ソーシャル」はビジネスにどのような変化をもたらそうとしているのか?
実際にソーシャルを使ったビジネスで急激に成長するサービスを紹介しながら、その変化の兆しを探っていく。

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