研究では、日本社会の現在、そして未来にとって重要と思われる「人口」や「GDP」「高齢化」といった約150の社会的要因からなる因果連関モデルというものを作成し、AIを使って2050年に向けての2万通りの未来シミュレーションを行った。

 根底にあったのは、少子高齢化や産業構造の変化で日本は成長・拡大の時代からポスト成長(非成長・非拡大)時代へのパラダイムシフトが起きつつあるという問題意識だ。

 そうした転換期に、人口や出生率、財政や社会保障、環境や資源の持続可能性、雇用維持、格差の解消や人間の幸福、健康維持などの課題に対処するには、日本社会のどういう未来シナリオがあるのかをAIを活用して予測し、さらに代表的なシナリオをグループ分けして、その展開などを解析。持続可能なシナリオへ誘導するには、どういった政策を展開すべきかを提言した。

 その中で、2050年に向けた未来シナリオでは、主に東京一極集中に示されるような「都市集中型」か「地方分散型」かという分岐がもっとも本質的であり、しかも人口・地域の持続可能性や格差、健康、幸福といった観点からは、「地方分散型」のほうが望ましいという結果が出たのである。

「都市集中型」では、都市の企業が主導する技術革新で人口などの都市集中、出生率低下や格差拡大が進む一方で、政府支出の都市集中で政府の財政は持ち直す。

 これに対して「地方分散型」は、政府の財政や環境(CO2排出量など)を悪化させる可能性には注意が必要なものの、出生率が持ち直して格差が縮小し、個人の健康寿命や幸福感も増大するからだ。

 加えて、そうした後戻りできない分岐が2025年から2027年頃に生じる可能性が高いという内容になった(「AIの活用により、持続可能な日本の未来に向けた政策を提言」参照)。

 今回の新型コロナ・パンデミックで浮き彫りになったことは、まさしくこの未来予測が示唆したことと重なる。

コロナ禍で見えた都市集中のもろさ
分散で自由度の高い生き方可能に

 あらためて言うまでもなく、感染症の災禍が特に大きいのはニューヨーク、パリ、ロンドンそして東京など、人口の集中度が高い1000万人規模の大都市圏だ。

 これらの極端な「都市集中型」地域は、他でもなく「3密」が常態化し、感染症の拡大が容易に生じやすく、現にそうしたことが起こったのだ。

 一方、ドイツでは、他の欧州諸国やアメリカなどと比べて今回のコロナによる死者数が相対的に少ない点は注目すべき事実だと私は考えている。