だから、コロナのときには、気分転換やひまつぶしというだけでなく、「懐かしの味」であるホットケーキを家族で一緒に作って、心を和ませたという人が多かったのだと思う。親子2代、3代に渡って、ホットケーキの思い出がある、という人もいる。

 だが、中国にはそういう「懐かしの味」的な存在の「手作りのおやつ」はあまりない。

 中国人のおやつの定番といえば、ひと昔前までは、ひまわりのタネや駄菓子、中華菓子、果物などが中心だった。それが経済力の向上とともに急速に豊富になっていき、現在では、スナック菓子、タピオカなど台湾系スイーツ、中華風のクレープ、ケーキなど、ありとあらゆるものがある。スーパーを歩いていても、量り売りの駄菓子が山のように積まれているし、日本製や韓国製のお菓子も売っている。

 中国のデータによると、1990年代、2歳以上の子どもの「おやつ消費率」は11.2%だったが、2017年には56.7%にまで上昇している。30年前、おやつは贅沢(ぜいたく)品だったが、今ではお金さえ出せば、おいしいおやつを好きなだけ食べることができるようになった。北京大学の調査では、肥満の子どもは2014年に20.5%となり、過去20年で4倍にまで増えている。

 しかし、社会が急速に変化したことと地域差が大きいため、多くの人々が同じように思い浮かべる「思い出のあの味」というものは比較的少ない。

 数年前から、北京や上海にクッキング教室ができ始め、また手作りに価値を見出す人も増えてきて、クッキーを自分で焼くのが趣味だという若い中国人女性も珍しくなくなってきた。

共働き家庭が多いため
おやつを作る状況があまりない

 ホットケーキは、中国ではまだメジャーなおやつではないし、前述のように共働き家庭が多いため、家庭でおやつを作るというシチュエーションはあまりなかった。

 だから、中国人からすると、日本で品切れになるほどホットケーキミックスが売れたことは、とても不思議な現象に見えたのだろう。

 一方、新型コロナが最も大変だった1月下旬から4月上旬ころまで、中国人のSNSで最もよく見かけたのはおやつではなく、肉や魚、野菜、餃子などの家庭料理の数々だった(1月末はちょうど春節の時期にぶつかったこともあり、食卓はかなり豪華だった)。