「国内マーケットがあるから安泰」ではない

 先日、北海道から沖縄まで15カ所ほどのホテルに、6月に入ってからの稼働状況を聞いた。すると、私がヒアリングしたところに限ってはいるが、20%を超える稼働率になっていたホテルは一つもなく、緊急事態宣言の解除があったからといって、短絡的には予約が増加するわけではないことがわかった。

 インバウンドの影響は意外と大きくないのなら、これから国内需要に期待すればいいという声もある。しかし、稼働率20%未満の状態が続いていることからも、先に述べた日本人の消費額22兆円のマーケットがいつ回復するかは、まだ不透明だ。その消費額の半分がマーケットに戻ると仮定しても、すでに第1四半期(4月~6月)の売り上げを喪失している。マーケットの縮小と時間的な制約が課題となっている。

 加えて、マーケットに見え隠れする警戒感も大きな問題だ。集団での移動や行動は、依然としてマーケットからも敬遠されている。また、ルール順守をすれば当然、多くの移動手段でも送客力(収容人数)が半減される。移動制限の解除後はビジネスマンを中心に動きだしてはいるが、いわゆるレジャーや観光での団体旅行の活況はしばらく期待できない。この警戒感はホテル側が「安全・安心」を唱えても、容易には払拭できないかもしれず、秋口からの観光などのベストシーズンが第2波、第3波と重なるようなことでもあれば、せっかくの回復基調もほごにされる可能性もある。

「マイクロ」よりも「ミニ」ツーリズムのすすめ

 こうした人々の警戒感を受けて、最近、マスコミを通じてホテル関係者などが県内需要を喚起する「マイクロツーリズム」を提唱している。もちろんこれらの施策も決して悪いことではないが、果たして県内需要だけで営業利益が出せるほどの収入が上げられるだろうか。

 例えば、群馬県が県民限定でキャッシュバックキャンペーンを始めるようだが、私はこれを県民のみの限定にせず、隣県・近県をも巻き込んだ形にすべきだと考えている。例えば、関西圏が主たるマーケットになっている四国では、まず「ミニツーリズム」として四国4県の共通キャンペーンを実施するという形だ。そして、その財源も県税に求めず、国の「Go To キャンペーン」に求めれば不公平感も拭えるのではないか。