「人口を集中させない対策」は
非常に難しい

 人口の集中が感染拡大の原因の一つなのであれば、人口を集中させない対策が必要という主張もあるが、居住地の変更を伴う人の動きを作り出すことはそう簡単ではない。

「なぜ人が東京都に集中しがちなのか」といえば、それはとりもなおさず生活に、仕事に便利だからであり、その利便性を捨ててまで、移住する人はどれだけいるのだろう。数にしてそれほど多くはない地方への移住の事例をもって誰でも移住はできると考えるのは、安直を通り越して、少々危険であろう。

 これに関して、東京近郊に都心の業務地域の代替的役割を担う拠点をいくつか整備すれば、都心への人口集中は緩和されると主張する候補者もいる。

 なんとなくもっともに聞こえるかもしれないが、まず、業務地域の一部を郊外に整備することは都市のスプロール化、すなわち無秩序な拡大を招くおそれがあるし、それはとりもなおさず隣接・近隣地域の住環境や生活環境の破壊にもつながりかねない。

 そもそも新たな業務地域を整備するためには、それ相応の土地が必要であるが、そうした場所は往々にして交通不便地帯であるし、必要なインフラの整備も遅れている。交通網の整備からライフラインを中心としたインフラの整備を同時に行わなければならないが、都心の一部代替ということになれば、こちらもそれ相応の規模のものを整備しなければならない。

 加えて、当然のことながら、そこで仕事をするということになれば、飲食店や物販店といった業務地域の日常的な生活に必要な機能も誘致することが必要となる。要するに新しいまちをもう一つ造るに等しいということであるが、そこを利用するのは当該地域に勤務する人たちだけではなく、周辺住民も利用することになるだろう。

 人が密集する場所を新たに創出するだけに終わる可能性は高いのみならず、新たに渋滞等の外部不経済が発生する可能性もあり、さらに生活環境等を悪化させかねない。

 そもそも業務地域と住宅地域を分けるのは、そうした問題を発生させないか緩和するためであり、本末転倒な案であるとしか言いようがない。

 その程度のものを自らの政策として主張されても、学芸会のアイデア合戦のレベルだと評されても仕方あるまい。

 しかし、そんなことまでが真顔で語られているのが今回の都知事選の実態だといっても過言ではあるまい。

 以上、都知事選の投票行動の一助となれば。