2.風邪
~空気の流れが体に悪い影響を与える

 中国では、古くから空気の流れが体に影響を及ぼすと考えられており、日本で病気のことを「かぜ」というようになったといわれています。そのため、もともとは呼吸器系の疾患だけでなく、腹痛や神経疾患なども含まれていました。漢字は「風」が用いられていましたが、「からだに影響を及ぼす悪い風」を意味する漢語の「風邪(ふうじゃ)」を「かぜ」と読むようになりました。

3.薬玉
~薬効のある香料を玉にして飾った

 薬玉(くすだま)は一見、薬とは関係なさそうですが、なぜ「薬」の字が用いられているのでしょうか。もともとは、5月5 日の端午の節句に邪気払いや長寿を祈って、麝香(じゃこう)、沈香(じんこう)、丁子(ちょうじ)といった薬効のある香料を玉にして錦の袋に入れ、飾り付けしたものを薬玉といいました。この形に似せて、玉を割ると中から紙吹雪や垂れ幕などが出てくる祝い用の飾り玉がつくられました。

4.十二指腸
~名前の由来は指12本分の幅と同じ長さ

 十二指腸は小腸の上部にあたり、胃とつながる部分です。名前に「十二指」とあるのは、長さが指12本を横に並べた幅(拳三つ分)と同じくらいであることに由来します。古くは、ギリシャ語の「dodekadaktylos( dodeka<12>+ daktylos<指>)」に始まるといわれています。日本では、日本初となる西洋解剖学の訳書として知られる『解体新書』でオランダ語から「十二指腸」と訳され、「其の長さ十二の指の横径の如くして」と紹介されました。

5.溜飲が下がる
~胃の酸っぱい液が喉元から下がってすっきり

「溜飲(りゅういん)」とは、胃の具合が悪いことによって喉元まで酸っぱい液が上がってくることです。これが下がると胸がすっきりすることから、不平不満や恨みなどがなくなって気持ちが落ち着くことのたとえとして用いられるようになりました。

6.脈略
~血管を意味する鍼灸の用語

 もともとは、鍼灸(しんきゅう)の用語で「血が流れる血管」を意味します。体中に張り巡らされた血管の様子から転じて、物事のつながりや筋道の意味で用いられるようになりました。鍼灸では、脈の状態から体の症状を診察する脈診が行われるなど、鍼灸と脈は密接な関係にあるのです。

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7.匙を投げる
~薬を調合するための匙を投げて治療を諦める

 ここでの匙(さじ)は、薬を調合するための匙をさします。治療法を見いだせない漢方医が、薬を調合する匙を投げ出して治療を諦めることを表しています。そこから転じて、物事に救済や改善の見込みがないと断念すること、前途がないとして見切りをつけることなどの意味になりました。

※漢字エンタメ誌『みんなの漢字』2020年5月号から抜粋

監修/久保裕之(立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所)

AERA dot.より転載