他社との差別化の最後の決め手は「人」
OB・OG訪問で内定承諾率が上昇
一方、OB・OG訪問を採用活動の一環としてより積極的に活用している企業もある。アビームコンサルティングでは100人の公認OB・OGが「業務」としてOB・OG訪問を受けており、採用の母集団形成の一つのチャネルと位置付けている。
「コンサルタントの仕事というのは分かりにくい。だからこそ現場の社員と会ってコンサルタントの仕事を正しく理解してもらい、興味関心を持って選考に進みたいと思ってもらう。そうした志望意向の向上において、OB・OG訪問が果たす役割は大きい」(人事グループタレントアクイジションチームシニアマネージャー・秋山真治郞氏)
その効果は数字となって表れている。OB・OG訪問実績のある21年卒の約230人の学生は、選考合格率が非常に高く、さらに最終的な内定承諾率も全社平均と比べて30ポイント近く高かったという。
「セミナーなどと違って1対1で話を聞いてもらうことで、企業理解が深まり志望意向も上がったのではないか」(秋山氏)
企業が採用活動においてOB・OG訪問を重視するようになった背景を、ビズリーチ新卒事業部事業部長の小出毅氏はこう説明する。
「近年、ビジネスモデルによる他社との差別化が難しくなっており、多くの企業が悩んでいる。そこで差別化の最後の決め手として、『人』や『人が醸し出す企業文化』が注目されるようになり、それを学生に伝える手段としてOB・OG訪問が重視されるようになっている」
その結果、ビズリーチ・キャンパスを利用した21年卒のOB・OG訪問の4月の訪問承諾件数は、前年同月の20年卒と比べて1.7倍と大幅に増加した。さらに、22年卒のOB・OG訪問の5月の訪問承諾件数は、前年同月の21年卒と比べて2.7倍に増加している。22年卒は21年卒よりも動きだしが早期化していることが分かる。
「確かに22年卒は動きだしが早いが、全体的に早いというよりは、一部の意識の高い学生が突出して早く動き出して行動量を増やしている印象がある」と小出氏は言う。
ビズリーチ・キャンパスを利用している明治大学政治経済学部3年の佐野巧さんは、そうした意識が高い学生の一人だ。佐野さんが就活を始めたのは3年生の4月から。中学・高校や大学の先輩と密に連絡を取る中で、早めに動いた方がいいと考えるようになったからだ。
「自分にとってOB・OG訪問はめちゃくちゃ大事。企業説明会だとインターネットで調べれば分かる情報しか得られない。一方でOB・OG訪問は1対1のコミュニケーションで、ネットでは出てこないアンオフィシャルな情報を聞くことができる」
そう語る佐野さんは、7月初旬時点ですでにビズリーチ・キャンパス経由も含めて約20人のOB・OGを訪問したという。
従来、OB・OG訪問はどちらかといえば“非公式”な就活として位置付けられていたが、コロナ禍を機に学生にとっても企業にとっても、“公式”に接点を持つ貴重な就活の場となった。今後も積極的に活用されることだろう。