預貯金頼みだと、人生をまっとうする前に
資金が底をついてしまうかも
村山さんも、さっそくこの機能を使ってみることにしました。すると、3・2%の運用利回りを目標にすればよいとわかりました(下図)。
資産運用について書かれた書籍では、「定年を迎えた60代以降は、リスクの高い運用はなるべく避け、安定的な運用に切り替えるべきだ」という意見が多く見られます。それも一理はあるでしょう。
しかし「はじめに」で触れたとおり、長寿化によってリタイア後の人生はより長くなってきています。65歳でリタイアしても、生涯をまっとうするまでに20~30年以上あるケースも想定しなくてはなりません。
そう考えると、老後資金として必要になるお金も、預貯金として安定的に確保しておくだけでなく、ある程度は積極的に運用したほうがよいのではないでしょうか。
昨今、預金金利はネット銀行などで有利なものを探しても年0・2%程度です。村山さんの場合、余剰資金2000万円を年0・2%で運用して毎月8万円ずつ取り崩した場合、お金が20年9ヵ月しかもちません(想定利回りで運用した場合にどのくらいの期間お金がもつかは、利回り計算金融電卓の「取崩し受取期間」で計算できます)。
このように、低金利の預貯金だけに頼っていると、人生をまっとうする前に資金が底をついてしまうおそれがあります。
資産活用タイプの人でも、運用利回りは最低でも3%程度はほしいところです。
また、もし子どもや孫に資産を遺すために資産運用をするのであれば、5%以上の運用利回りを目標にしてもよいでしょう。
なぜなら、子どもや孫がその資産を引き継いで運用することになるので、自分の余命までを運用期間にしなくてよいので、その分リスクがとれるからです。
これで、資産活用タイプのあなたの準備は整いました。次節に進んで、今度はあなたに適した資産配分を考えていきましょう。
モーニングスター株式会社 代表取締役社長
1966年生まれ。1989年慶應義塾大学文学部卒。銀行、証券会社にて資産運用助言業務に従事した後、95年米国イリノイ大学経営学修士号取得(MBA)。同年、ソフトバンク株式会社財務部にて資金調達・資金運用全般、子会社の設立、および上場準備を担当。98年モーニングスター株式会社設立に参画し、2004年より現職。第三者投信評価機関の代表として、常に中立的・客観的な投資情報の提供を行い、個人投資家の的確な資産形成に努める。
主な著書に、『「つみたてNISA」はこの7本を買いなさい』『一生モノのファイナンス入門』(以上、ダイヤモンド社)、『「iDeCo」で自分年金をつくる』(祥伝社新書)、『お金の未来年表』(SB新書)など多数。