1人あたりGDPで見ると
日本は世界26位という現実

 では、その国の経済の実態を知るにはどうすればいいかというと、数の積み上げをやめればいい。つまり、GDP総額を人口で割った「1人当たりGDP」である。こちらにすると、日本は「世界26位」まで転落する。「兄貴」くらいに考えていたアメリカは9位とはるか上で、「財政難で医療体制も未熟だ」などと見下していたイタリアが、すぐ隣にいる。

 誤解なきように言っておくが、「日本は大した国じゃない」などとディスりたいわけではない。GDP総額という耳当たりのいい「数の積み上げ」ばかりにしがみついてきたせいで、自分たちが置かれているシビアな現実を正しく認識できなくなってしまっている、という問題を指摘したいだけだ。

 日本は労働者の賃金も主要先進国の中でダントツに低く、貧困率も高い。少子高齢化に歯止めがかからないので、現行の社会保障も破綻するのは目に見えているなど、問題山積だ。が、今の日本社会にそこまでひっ迫した危機感はない。どこかに「腐っても、日本は世界3位の経済大国だもんな」という“おごり”のようなものが、まだ多くの日本人の中に残っているので、面倒な問題を先送りにしてしまうのだ。

 これこそが、筆者が「累計の罠」と呼ぶものが招く「害」の最たるものである。

 そこで気になるのは、いつから我々はこんなにも「数の積み上げ」に執着するようになってしまったのかということだが、個人的にはやはり「戦争」が大きかったのではないかと思っている。かつて兵士、弾丸、食糧、物資という「数」で戦う戦争を長く続けた際に、官民に「数を積み上げる」という方法論が一気に広まって、いつの間やらそれが目的化してしまったのだ。