ネガティブなことを伝える「3つのテクニック」
レビュー文化の浸透した開発チームでは、プログラマー同士の会話は、ときに知的ボクシングのような様相を呈する。
「ここはもう少しこういう書き方のほうがよいかと」
「いや、こうしたのには理由があって。〇〇を重視してあえてこうしたんです」
「そのやり方は少し前に流行ったやり方なんだけど、現代的ではないよね。なぜ廃れていったかというと、××という問題があり、いまは使われていないわけで」
こんなやりとりがかわされる。角かどのある発言をすることは、この知的ボクシングのグローブに釘を仕込むのと同じだ。レビュアーの宿命を引き受けたうえで、このグローブをふかふかのクッションにしなければならない。
これはレビューだけでなく、さらに言うとビジネスだけでなく、人間関係にも同じことが言える。
コミュニケーションはいつだって、楽しさや笑いに満ちていたほうがいい。ではどうすれば、グローブをソフトで心地よいものにできるのだろうか。コツは3つある。
(1) 優しく言う:「ちょっと思ったんだけど」「~かもね」
ときには「ひよコード」でさえ凶器になる。「またひよコードかよ」と言ってはいけない。何かを指摘しなければならないときには「ちょっと思ったんだけどさ」と優しく語りかけるように心がける。確実に問題があるときでも「~という課題があるかもね」と、最後に「かもね」をつけるだけで一気にマイルドになる。
(2) 自分が過去に同じミスをした話から入る:「ここはミスしやすいところなんだよね、昔自分も……」
「問題点に気づくのは、かつて自分も同じミスをしたから」という場合も多い。相手に問題点を指摘する前に、自分も同じミスをしたことがあることを告白しよう。相手との関係を「レビューする人とレビューされる人」から「同じミスをしたことのある仲間同士」へと転換することができる。
(3) 相手に敬意を払う:「〇〇さんの言うことは本当にそうだなって思って」
「そもそもそれは間違ってますよ」などと言うと、内容を聞く前に相手が精神的ガードを上げてしまう。「〇〇さんの言うことは本当にそうだなって思って」と相手の考えを理解し、敬意を払う。そのうえで、「それで言うと、ここも直したほうがいいかなって思ったんだよね」と問題点を伝えよう。ただし、これは相手の言っていることと問題点とのつながりを見出したときのみ使える手法だ。むやみに使うと説得力が落ち、さらに頭が悪いと思われるので気をつけてほしい。