失業率上昇や
不動産価格の高騰などへの不満膨張

 輸出が伸びない以上、韓国経済が安定を維持し、成長を目指すことは難しい。その状況下、韓国国内では生活の苦しさが増し、文政権への批判や不満が膨張している。韓国国内の経済環境を見渡すと、国民が不満を高める要因は少なくない。

 まず、所得・雇用環境の悪化が鮮明だ。これまで文政権は、労働組合の支持獲得を狙って最低賃金を無理やりに引き上げた。それが若年層を中心に雇用機会を喪失させた。文大統領は人手不足が深刻化する中で労働時間の短縮を実施し、企業の収益力を追加的に削いだ。それに加えて、新型コロナウイルスの影響で韓国の観光、航空、小売りなどの収益は減少し、雇用情勢の悪化に拍車がかかっている。

 また、首都圏を中心に不動産価格が高騰している。その背景には、人口問題、低金利、価格上昇への過度な期待などが複合的に絡み合っている。2019年、韓国の合計特殊出生率は0.92だった。韓国の人口問題はわが国以上に深刻だ。より多くのチャンスを求め大企業や官庁が集まるソウルを中心に人口が流入し、首都圏の人口は全体の半分を超える見通しだ。

 ソウルへの一極集中と世界的な低金利環境が続く中、朴槿恵(パク・クネ)前大統領は景気刺激のために不動産開発規制を緩和した。その結果、富裕層などの投資(投機)資金がソウルのマンション市場などに流入し、“価格が上がるから買う、買うから上がる”という強気心理が連鎖した。マンション価格は市民の手が届かない水準まで高騰している。景気後退が進む中で家計の債務残高も増加し、人々が先行きに希望を持つことが難しくなっている。

 経済の悪化にもかかわらず、文氏は自国経済を「奇跡のように持ちこたえた」と主張するなど、自らの成果を誇示する発言を繰り返している。経済環境が厳しさを増していることを考えると、経済運営を自画自賛する文氏の言動は信用できない。文氏の発言は、人々の心理を逆なでし、不支持率が支持率を上回った一因になっただろう。見方を変えれば、文氏は事実に背を向けて、政策の正当性を訴えなければならないほど苦しい状況に追い込まれているとみるべきだ。

韓国政権に期待したい
真摯で前向きな姿勢

 外需依存度が高い一方で、内需の厚みを欠く韓国経済が自力で安定を目指すことは難しいだろう。韓国国内では文政権への不満が追加的に上昇する可能性が高い。それは、わが国をはじめとする国際世論にとって無視できないリスク要因だ。

 懸念されるのは、文大統領が膨張する不満のはけ口として、これまで以上に、より強い調子で反日姿勢を強める展開だ。8月4日には、元徴用工への賠償問題に関して、韓国の裁判所が日本製鉄の資産売却を命じる可能性がある。文大統領は、日韓の国交正常化と韓国経済復興の礎となった1965年の日韓請求権協定を無視し、自国の司法判断を尊重する構えをとり続けている。